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けど。 それだけでもう、だいたい分かってしまって、自嘲気味に笑う。 だって、この人は駆け引きなんてしない。 だから、主演女優には、いつもならなかった。主演をとるのはもっと、自分の見せ方をきっちり計算して、可愛さを存分にアピールできるタイプの人で。 真澄先輩はただ、一見、不躾とも思えるほど、真っ直ぐに見て言葉を告げるから。 真澄先輩の好きな人は知らないけれど、それが俺ではないことは、さすがに分かっていた。 「誰が好きなんですか?サークル内の人?」 「違うよ」 「学部?バイト?」 「学部。ゼミが一緒」 「上手くいきそうっすか?」 「どうだろうなぁ、分かんない、今のところ」 「告白しないんすか?」 「どうしよう。でもしたほうがいいかな、的場くんみたいに」 「したほうがいいっすよ、て、俺なら言いますけど、でも、それは先輩が決めて下さい」 「そうだよね」 告白を断って、ごめんなさい、なんて、言わない先輩が好きだった。 だって、先輩に謝るべきところは何もない。悪いところなんて何もない。だから謝らない。 だけど。 本当はとても優しい人だから。 「ありがとう、的場くん。真っ直ぐ好きだって言われるのってやっぱり嬉しいね。私もちゃんと言おうかな」 ほらね。俺が傷つき過ぎないように、さりげなくフォローは入れてくるんだよ。ほんと、そういうとこもすげえ好き。
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