135人が本棚に入れています
本棚に追加
抱えていたダンボールを、どさっとデスクに置く。
「よろしくお願いします。的場友樹、です」
「はい、よろしく。時任です。5年目だから、ここでは、あなたのすぐ上の先輩、てことになるかな」
忙しく動いていた手を止めて、目を合わせてくれる。やはり笑顔はなく、でも、つんけんしているというわけでもない。
妙な求心力を感じるな
なんというか、つい見ていたくなるような
やっぱり目だよな……大きいし。黒く、強く、真っ直ぐ届く。でも暗くはない、少しきらめくような、綺麗な目。
「ここの席って、前、誰か居たんですか?」
「そう、こないだまで1期下の後輩が……」
「辞めたんですか?」
「うん、まあ、いわゆる寿退社」
前任者は女性か……その人が欠けて、この課は時任さんの紅一点となったわけだ。
「そうですか」
「的場くんは営業からの異動だってね。業務内容は全然違うと思うけど、まぁ、とりあえずしばらくはなんでも聞いて」
「はい」
「どうぞ遠慮なく」
「はい、ありがとうございます」
時任さんはまた、じっと見る。笑わない。笑わないけれど。
嫌な感じもしないよな。
俺もそんな、できれば不必要に笑いたかはないし。
すっと視線が逸れたのを機に、段ボールからデスクに荷物を移していく。
カタカタカタカタと小気味良いリズムで、隣の席のキーボードが鳴っていた。
最初のコメントを投稿しよう!