吾輩は幽霊である

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 ──しばらく眠ってしまったようだ。先ほどまでは青色をしていた空が、オレンジジュースのような橙色に染まり始めている。  彼女に祓われそうになったから体力が減っていたのかもしれない。でも、寝たらだいぶ回復できた気がする。  よし。行動開始。  まずは現状把握だ。私が今いる場所は、どうやら林のようだけど、どれくらい飛ばされたんだろう? 「よっこらせ」  私は立ち上がった。幽霊には足がないのに「立ち上がった」なんていうのはおかしいかも知れないが。  林を抜けると、商店街があった。アーケードの下にいくつものお店が所狭しと並んでいる。私は、買い物をするおじちゃんおばちゃんたちをすり抜けながら商店街を歩いていた。  すると、風に飛ばされた『安売り』のチラシが、私の目の前で踊っている。  なんとなく、それを見てみた。 『お菓子の森屋 全商品10%オフ!』  おおお!これはこれは!行かぬわけにはいかぬ!  私はお金を持っていない上に、ものを食べることができないのだが、お菓子屋はそれでも楽しめる場所である。  あの世でもお菓子屋はあったが、人間の食べるお菓子はそれよりも数倍おいしいという噂を聞く。食べることができないのが悔しいが、このくらいなんてことない。    お菓子屋は子供の天国であろう!早速行かないとな。  いやしかし、何かを忘れているような気がする。私がこの世にわざわざやってきた理由、なんだったけ?  まあいいや。  森屋の場所はどこかな。わくわく、わくわく。  そうして十分ほど歩いていると、ようやく見えてきた。『お菓子の森屋』という看板。  私は、お店のドアをすり抜けて中に入った。 「わああ、お菓子がたくさん!おいしそう!」  ここで、皆さんはこう思っただろう。 『幽霊はものを食べられないのでは?味が分かるの?』と。  それでは皆さんの疑問にお応えしよう!  確かに、幽霊がものを食べることはできない。だが、『食べた気になる』ことは可能だ。  実際には食べていないが、お菓子を取り込むことでその味を知ることができる。だから、食べるというよりは取り込むと言うべきなのだろう。  私は店内を見渡した。  狭い店内には、色とりどりのお菓子が所狭しと並べられている。  私は、早速うまい棒を取り込んだ。  サクサクとした食感。コンポタの深い味わい。懐かしいと感じる味。  最高だな。お菓子というのは。  ところで、話が変わるが、皆さんは買い物の途中で知り合いに会ったことはないだろうか?きっと誰でもあると思う。      
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