結婚式

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貴文さんはイケメンだし優しいし、車の運転丁寧だし、どこにでも遊びに連れて行ってくれるし、新しい世界を見せてくれる。仕事もしっかりしたところにお勤めだし、家事もできる。 最高の恋人、そして今日からは、最高の旦那様。 なのに胸騒ぎが治まらない。さっき貴文さんに言ったら、マリッジブルーだと言われた。 「考えすぎだよ、みちるちゃん。花嫁さんは、多かれ少なかれ、そんな気持ちになるもんなんだって。 僕と結婚して、なんかマイナスなことある? ないでしょ? ほら、気のせいだ」  こういうとき、みちるはうまく言い返せない。貴文さんの言っていることは正しい。たぶん正しい。大体、結婚式直前になって、うだうだ言ってみても始まらない。 けれどみちるの悪い予感は、いまに始まったことではなかった。貴文との結婚が決まった三か月前から、たびたび動悸や悪夢、呼吸困難に襲われていたのだ。 でもどうしても、貴文さんと結婚したかった。イケメンで、すらっと背が高くて、見栄えのする貴文さんと結婚したら、いままでみちるを馬鹿にしてきた友人たちも、一目置くはずなのだ。  こんな考え、貴文さんに失礼だし、嫌らしい、汚らしいと、みちるもわかっている。でもどうにもならないのだ。こころが、いうことをきいてくれないのだ。
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