恋の始まり

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 貴文はみちるの人間関係にも口出しした。 「みちるちゃんの工場の女性社員たち、付き合わないほうがいいよ。みんな、みちるちゃんのこと馬鹿にしてる。僕、聞いちゃったんだ、工場行ったとき。みんなでみちるちゃんの悪口言って、盛り上がってたよ」  貴文が語った悪口の内容は、確かに工場に勤めている人間でなければ知りえないようなもので、みちるは随分とショックを受けた。 みちるはみんなと一緒にお昼ごはんが食べられなくなり、独り工場裏のベンチでお弁当を食べるようになった。  貴文はこうも言った。 「みちるちゃん、ちょっと太ってきたんじゃない? 僕がいるから安心しちゃったかな? これからは、毎朝走ったほうがいいね。太った女性は好きじゃないんだよ。四十五キロ超えたら別れなくちゃ。大丈夫。僕も一緒に毎朝走るから」  みちるが半裸になって体重計に乗るのを、貴文はいつも見張っていた。
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