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「これだよ、これっ!!」
マッキンキンの癖毛の見た目ヤンキーな夏希さんがスマホを突き出す。
そこに写っているのはとんでもない美少女の画像だった。
赤ずきんの衣装を着て半泣きになっている八歳のタケル。
撮ったのもコスプレを強要したのも私だ。
「こんな画像送り付けられて、黙っていられる訳ないよね?」
結子さん、涙目の訴え。
バイトメンバーのグループチャットに、その画像を貼り付けたのは明らかに失敗だった。
昨日、タケルがナマイキな口を利いたので、イジワルして貼り付けてやったのだ。
正確に言うと、送り付けるフリだけのつもりだったのに、阻止しようとしたタケルが抱きついてきたので送信してしまっていた。
タケルってば、オトコなのになんであんないい匂いがするんだろう? 本当、ナゾである。
いや、タケルの体臭の話は長くなるからやめよう。
とにかくこの場を収めるために、私は深くうなずいて年上ふたりに理解を示す。
「おふたりの気持ち、よく分かります」
「分かってくれた?」
ふたりの顔がパッと輝く。
「年下のオトコノコに性欲をたぎらせる。それも同僚に。それほどまでに、お二方はヨッキューフマンであらせられる。性欲が発散できないのはツラいですよね。私は経験がないので知りませんが」
「いやいや、そーゆー言い方はよくないぞ!?」
夏希さんが顔を真っ赤にして否定する。
見た目ヤンキーのくせにウブな処女。下ネタを出されるとグダグダになるのだ。
「いいえ、分かってます分かってますから。女装しようなどと言いくるめ、かわいい高校生男子を裸にひん剥く。ふたりは成人女性ですから、思いっきり条例とかに引っかかるでしょうが、そんなのお構いなし。それほどまでに、おふたりの性欲は、今、ドエゲツナイことになっているんですよね?」
「違うわ! 性欲なんてあんまりよ!」
潔癖な結子さんが濡れ衣を着せられて大粒の涙をこぼす。
さすがにやり方がエグかったかもしれないが、とにかくふたりの心を折ることに成功した。
これで私のかわいいタケルは救われたのだ。
私がにこやかにタケルを見ると、だけど向こうは顔をしかめていた。
「ミドリ、下品」
タケルは、夏希さんよりも結子さんよりも下ネタが苦手である。
知らない私ではないが、顔を赤らめる程度だろうと高をくくっていた。
なのに、虫を見るみたいな顔で罵倒!?
いやいや、あなたの為なのですが?
「下品ってなんだよ、タケル。私は事実を述べただけだ」
「事実じゃないもんっ!」
結子さん、ハタチにもなって「もん」はなかろう。
「でも下品。ミドリがそんな下品な話をうれしそうに喋る子だなんて知らなかったよ」
「うれしそう? うれしそうにはしていないぞ?」
「ううん、うれしそうだった。ミドリって、そんな子だったんだ? 知らなかった」
タケルは虫を見る目をやめない。
私はうれしそうに下ネタを口走っていた?
そんなまさか!
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