第2話 かわいい子にメスガキは上等すぎる

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 店員のうち、結子さんとタケルは料理も皿洗いも任せられない、接客と掃除しかできない無能だ。  今日のシフトはタケルと私、それと店長。よって、キッチンはすべて私の領分である。  シフトの終わりまでヒマだと思っていたら、夕方になる前にお客が何人か現れるという面倒が。  店長がコーヒーを淹れている横でナポリタンを仕上げる。視界の端にいる看板娘が気になって仕方がない。  どうにか盛り付けたナポリタンを、お客のトドロキさん(平日の昼間から喫茶店に入り浸っているナゾの中年男性)のテーブルの上に置く。  その足で、幼馴染みがいるテーブルまで素早く移動。  もう十五分以上、看板娘を釘付けにし続けているのは三匹のメスガキどもだ。 「タケルく~ん、勉強教えてよ~」 「あたし、ここ分かんな~い」 「バイトなんてほっといてさ~」  近所の中学校の制服を着たメスガキどもは、三匹とも顔も髪型もまったく同じだった。  つまり、三つ子である。  もう何回もやってきてはタケルに絡んでいるのだが、私は未だにこの三匹の区別がつかない。  茶色がかったセミロングも校則ギリセーフの制服の着崩し方も、カバンにぶら下げるぶさいくなタヌキのマスコット人形までもが同じ。  こいつら自身、お互いの区別が付いているのか怪しいと私は思っていた。  本当は今すぐ首根っこ引っ掴んで外へ放り出したいのだけれど、いちおう客商売なのでまずは営業スマイルで話しかける。 「お客様、なにかお困りでしょうか?」  とたんにメスガキどもは猫なで声をやめて毒づく。 「ちっ!」 「うっざ!」 「呼んでねー」  これだけでギルティだけれど、私は忍耐強くウェイトレスを続ける。 「うちの店員がなにかやらかしたのでしょうか? ずいぶんとしつっこく! 絡んでいらっしゃるようですが?」  目はすでに笑っていない。  威嚇は成功したようで、メスガキの顔に焦りがにじみ始める。  本気を出せば、中学生ごとき何匹いようが私の敵ではない。こと、タケルが関係していれば。 「ちょっと勉強教えてもらうだけだし~」 「タケルくん、別に嫌がってないし~」 「かわいい後輩、助けるの当たり前だし~」  別にかわいくねーよ。  タケルを見ると、どう対応したものか分からず困っていた。  オンナには優しくすべきと、父親の太一さんに吹き込まれているせいに違いなかった。  よけいに困らせると分かってはいるが、図々しいメスガキどもにタケルの意志を示さないといけないだろう。 「タケル、ホントにイヤじゃなかったか? メスガキどもに絡まれて、ウザかったろ? こんな奴ら、一秒たりとも相手にしたくないよな?」 「い、いや……そこまで酷いことは……」  しまった、有無を言わさずをやろうとして失敗した。  メスガキごときの気を遣ってしまうタケルは本当、かわいい。  そのせいで面倒なことになってきたけれど、すべての責はタケルの心優しさを見誤った私にあった。
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