1.6月

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1.6月

「今月もありがとうございましたー」  高校の校舎から少し離れたところにある図書館七階にある図書館会議室を出ながら、保健室の優花先生に声をかける。先生は先月もカウンセリングを受けた時と同じ事なを繰り返し言った。 「次のカウンセリングは来月の第二月曜日の放課後時間は変わらないからね。場所も変わらずここ、図書館会議室ね」 「はーいって言ってもここでカウンセリング受けてるの私だけなんですけどー。私と同じ学年に同じフラジール持ちの子いなさそうだし……。いたとしても先生言わないですよね」  わざとらしくチラリと先生を見れば「当たり前でしょ」と返事がくる。 「もちろん。守秘義務ってやつだよ。担任の秀先生には黛さんの今回のカウンセリング結果伝えとくからね」 「あー!私の個人情報がぁ~!ねぇ、守秘義務は!?」  ぷぅっと左頬を膨らまし、誰が見ても不機嫌な顔をする。そんな顔を見て先生は私の頭に一回軽いチョップを出してから、言い聞かせるように言った。 「そーんなこと言ってられるか。先月フラジールが理由でかなりの回数、黛さん保健室来てるんだから。秀先生心配してたよ。心配減らすためにも伝えますからね」 「……はーい。秀せんせ、今年初めてクラス持ったから気合というか気遣いめっちゃしてくるんですよね。それ以前に良い人過ぎますよ。っていうかなんで私立いるんですか、県立の方とか向いてそうなのに」  身長が一般的な高校生と同じくらいで、いつもちょこちょこと動いている担任の先生を思いながら言葉を出す。本当、ここにいるのがもったいないくらい、いい先生。 「はいはい。無駄口叩いてないで帰りなさい。部活入ってないんでしょ?」 「部活は入ってないですけど、これから図書室で勉強していくのでまだ帰りませーん。でも、ここでお別れですね、優花せんせ、さよーなら!」 「はーい、さようなら」  先生と別れてから一つ下の六階にある図書館の入り口を入る。  私が通っている高校は少し変わっている。  中学、高校、短期大学があるが普通の街中ではなく山の麓に建てられている。山の地形を生かしているため、中学高校生が図書館を入る時は六階が入り口。短大生が図書館を利用するところは地下一階が入り口となっている。校舎も中学校校舎、高校生用の本館、南館、南館、短大生用の北館、西館がある。先ほども言ったようにここは山の麓にあるため山の地形を生かした校舎になっているため、どこかの館をはいればそこは一階ではなく三階、というのが当たり前な校舎。だから入学してすぐのころは何館の何階という移動教室は迷子になりかけるし、迷子になって当たり前だ。
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