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必要最低限な荷物を持って、学生鞄とリュックをコインロッカーに仕舞い込む。勉強する道具を持って、司書さんに挨拶をしてから六階の一番奥の窓側の勉強机に座る。
うん、やっぱりクッションのある椅子が落ち着く。木の椅子なんて腰と背中が痛くなるし、革っぽい材質の椅子は何とも言えない緊張感がある。さっきのカウンセリングがそう。
一つ重めのため息を六月に入っても雲一つない青空に向かって吐き出す。
「フラジールなんてめんどくさいの持っちゃったな。ま、なっちゃったものは仕方ないんだけど~」
先ほどカウンセリングを受けていたのはフラジールという特殊な病というか力みたいなもののせい。
フラジールは明確にいつ、どのようにしてなるのかがわかっていない。わかっているものは、日常生活の中で精神的負荷がかかっている生活を送っている人がなりやすい、らしい。それの治療法となる薬は正確に言ってしまえば無い。あるとしたらカウンセリングを行いその人のメンタルチェックを行うことぐらい。フラジールの力は本当に人さまざまで同じ症状を持つ人と出会ったことが無いぐらい多い。でも、フラジールになった人すべてに共通しているのが相手の感情を知ること、自分の本音が言えず自己犠牲(上手く言えば気遣い上手)になる。フラジールの力のせいでストレス性の病気になりやすいことも共通点だろう。胃腸炎とか身体の中ならまだ薬の力で治せるかもしれないが、心の病を治すことなんて無理に近い、はず。
でもそんなことを言ったってフラジールを発症する人は本当に、本当に少ない。
というのをネットの記事で読んで覚えたこと。研究とかはどうも進んだり進まなかったりらしい。
フラジールを持っている生徒に対してこの学校は月に一度、カウンセリングを行っているということをオープンスクールで知り、私立のここに入った。実は、県立受験に落ちたって言うのもある。
カウンセリングがあったせいか、それとも自分のフラジールについて少し考えてしまったせいか勉強に上手く集中できない。でもここは教室と違って図書室。勉強に集中できなければ諦めて本を読めばいい。図書館は本好きの私にとってこの空間は本当に落ち着く場所だ。
座っていた椅子から立ち上がり、現代文の小説が置いてある棚に向かい本を数冊選び席に戻る。
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