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そのあと本を棚に返し急いで図書館を出て、靴箱がある本館の昇降口に向かえば部活を終えた友達の悠美に会った。
「どしたの?ふうちゃん。そんなに急がなくても置いてかないよ?」
「悠美ちゃん違うって。図書館の閉館のアナウンス鳴ってちょっと気持ちが焦っちゃった」
「そうだったんだ。ふうちゃんが焦るの珍しい」
そんな話をしながら私たちは学校を後にした。
彼女は帰る方向も途中まで同じ一緒で、同じ電車を使って通学することや、席も近いことから悠美ちゃんから声をかけてくれたのだ。それから話す機会も増えて気が付いたら一緒に学校生活を過ごす友達になっていた。「隠し事なしで何でも話せる友達でいたい」と彼女から言われた時、私も私の隠していることを受け止めてくれる人であってほしいと心の隅で願った。それを言葉にして、伝えてしまったらこの関係が崩れてしまうのが怖くてあの事は言い出せずにいる。
(言いたいこと、言えなくてごめん)
心の中で謝りながら地元の駅に電車が着いた。そこで電源を落としていたスマホをつければたくさんのメッセージと着信が入っている。それの差出人はすべて同一人物で私の身内の人間。
あぁ、嫌だ。帰りたくないと思いながらも足は勝手にそこに向かって行く。
「……帰りたくないな。あんな地獄みたいなとこ」
生きてる感覚がわからないあそこを家とは呼びたくなかった。
「ただいま」
「おかえり風花。なんでばぁちゃんにメッセージ返してくれないの」
「ごめんごめん。学校でスマホ使っちゃいけない決まりだから。先生も学校でスマホ使ったら没収するって言ってるから許して?」
「そうなの?まあそれなら仕方ないね。ほらすぐに夕飯にするよ。お母さんとお父さんは仕事で帰りが遅いんだから」
「うん、わかってる」
私、上手く、笑えてるかな。さっき説明したの一体何回目だろう。スマホ電源入れなかったの、わざとなの。干渉されたくなかったから。でもそんなこと言うと祖母の機嫌を損ねて逆切れをされてしまうからこういうしかない。あぁ、今日もまた私はここで私の心を守るために自分を偽り、心を殺めてしまうのか。
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