1.6月

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 金曜日、私は学校を休んだ。  身体の中の甘さがなかなか抜けなくて起きることも億劫で、気持ちが悪い。水を飲んでも、ご飯を食べても全てが甘く感じるのだ。朝ごはんを一口食べ、口元を抑える私を見てお母さんが何かを察した。 「風花、今日学校やすみなさい。顔、真っ青だから無理していかない方がいいわ」  正直この状態で学校に行く気にはなれなかった。けれど学校を休むということは、ここにいないといけないということになる。私の考えていることを見通していたのか、お母さんは「お母さんの実家に行くから心配しなくていいよ」と優しく頭を撫でながら言ってくれた。お母さんの言葉がゆっくりとわたしの身体に入って気持ち悪かった甘さが少し消えていく。  お母さんはおばあちゃんに「体調が悪いから実家の病院で今週末まで風花を診てもらう」と伝え実家に向かった。家に急に訪れたのにもかかわらず、母方のおじいちゃんは訳も何も聞かず、「ゆっくりしていきなさい」と言ってくれた。  おじいちゃんの家で何もせず、ぼぅっとどんよりとして今にも雨が降りそうな空を見ていた。おじいちゃんは時折亡くなったおばあちゃんの話を私に聞かせてくれた。懐かしさと真実の味が甘い毒に侵されていた体のだるっけさを溶かした。  土日はかなり久しぶりに体の中にご飯以外の味覚を感じること無く過ごせた。日曜日の夕方、お母さんの車で家に帰る途中、こんなことを思ってしまう。嘘で塗り固めたところよりもずっとここにいたいと思ってしまったのはいけないことなのだろうか。
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