カエル退治

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 私は授業が終わると真っすぐバスケ部の練習に参加した。時計は見ないようにしていた。練習に集中しつづけて、時計を見ると6時過ぎ。ほっと肩の荷が下りたような気がした。  後片付けをして、制服に着替える。  そのまま、教室棟と体育館の間を通りすぎ、校門をくぐった。  せいせいした、と頭では思った。あんなやつにつき合う必要などないではないか。悪いのはあいつだ。  でも、私の足はすぐには駅のほうに向かわず、街中のお店をうろうろした。  学参でも買おうかなと書店に立ち寄ったのが悪かった。  『よくわかる高校数学』。    その文字に責められているような気になって、急に不安に駆られた。  私はそそくさと書店を出て、もと来た道を戻っていった。   校内にはもうほとんど人影がない。  上履きに履き替え、右階段を上っていく。2階の真ん中に職員室がある。抜き足差し足忍び足。そっとつま先で降りて、しずかにかかとを下ろす。  職員室からは灯りが漏れていた。 『まさかね』  そっとドアを開けて隙間から覗く。  視界が狭いけど、これ以上開けたら、バレる。  いた。  カエルは自分の机で、デスクライトに照らされている。  カエルのやつ、執念深いな。  そう思いつつも、やっぱりカエルは超のつくイケメンではある。集中して何かに向かっているときの我を忘れたような真剣な目は引き込まれそうだ。  うかつにもぼんやりと魅入ってしまった。  カエルの声で我に返る。 「いつまでそこにいるんだ。入ってこい。待たせやがって」  バレていた。
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