カエル退治

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 逸らせないつもりだった視線が下を向き、ついにうつむいてしまっていた。  そのことに気がつくと悔しくてしようがない。私まで、カエルの顔を直視できなくなっているだなんて。  なぜか次の期末テストの結果では、クラスの子たちの数学の成績はのきなみアップしていた。もちろん、トップを守り切ったのは私だったけれど。  私はカエルへの敵対的な意気込みが萎えてしまったのを感じていた。気が抜けて、バスケ部の練習もさぼって図書室に足を運んだ。茉莉ちゃんも誰も誘わずに。ひとりになりたかった。  ぼんやりとうろついているうちに「数学書」の札が見えて、無意識にそちらに吸いよせられて行った。 『数学の理解』 『証明問題の解き方』  つまらないと思った。もう二、三歩行くと、もっと専門的になった。 『数学 完璧なる美の世界』  つい手が伸びていた。ところがそこへ、もう一つの手が重なる。指が長いけど、ごつごつした手。うちは女子高だ。教師以外にこんな手の持ち主はいない。それも――。 「君に譲る。佐久間美緒」  振り向くと、案の定カエルが私を見下ろしていた。
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