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カエルはまじめに私の顔を見る。
「俺は授業で嘘は言っていない。数学ってのは、本当は限られた一部の天才にしかものにすることは不可能な学問さ。あとの凡人は、天才の明らかにしたことを承るのが精一杯」
カエルはふと遠くを見る目をした。
「そのことを、大学院まで進んでようやく理解した。どうしようもなく突きつけられたんだよ」
こんな弱さをさらすカエルはカエルじゃない。私はずっと黙っていたが、ふと思いついて、
「もしかして、藤野先生が高校教師になったのって、その挫折感からなんですか?」
「佐久間美緒は直截にものを言う」
カエルは苦笑した。苦笑とはいえ、初めてみるカエルの本物の笑顔だった。
「とにかく、その本は読んでみるといい。興味があるなら損にはならないさ」
そういってカエルは図書室から出ていった。
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