カエル退治

　私たちの共通の敵は「カエル」こと数学教師の藤野宏樹。二五歳、独身。この春からうちの高校に赴任したばかりだ。

　最初の数学の授業でカエルが教室に登場したときは、さわさわとさざ波が立った。すらりとしてて、はっきり言って超イケメン。色白で眉はすっと通り、鼻筋もきれいで薄い唇。切れ長の眼。

　ただ、鮮やかなグリーンの上着を着ているところだけは皆面食らった。
　カエルはなぜかいつもグリーンの上着、真っ白なシャツ、黒い細身のパンツ。それを違えたことは今までに一度もない。

　私たちは最初はほんのりとした期待を込めて「藤野先生」と呼んでいた。けれど、それが「カエル」に変わるのに、そう時間はかからなかった。