カエル退治

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 とにかくねちねちしている。  しかも、なまじビジュアルがいいだけ質が悪い。    口をついてでるのは暴言ばかり。「バカか」「恥ずかしくないか」「泣いてごまかそうって魂胆は見え透いている」。  眉一つ動かさずに情け容赦なく攻めてくる。しつこい、長い。侑子ちゃんで泣かされたのはもう十四人目。泣いても手を緩めることはなく、二十分でも三十分でもいたぶりつづける。 「こんなんじゃ、まともな授業にならないよ」  連休前に一度、茉莉ちゃんが職員会議に向けて私を誘ったことがある。 「一緒に直訴しにいこう」  ところが、窓の隙間からそっと覗いた職員室のようすを見て、私たちは絶句した。  カエルはにこやかに周囲の先生たちと談笑している。自然でやわらかい笑顔。女性教師たちは、端から見てもめろめろだ。それだけじゃない。厳しいことで知られる歴史のおじいちゃん先生も、相好を崩して輪に入っている。  情けない話だが、私と茉莉ちゃんはその雰囲気で早々に腰砕け。直訴状をひっこめて退散した。  そして悟った。  いつかは私たちが、カエルの化けの皮を剝がさなければならないということを。
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