カエル退治

7/19
前へ
/19ページ
次へ
 やがてカエルは赤いコップに手を伸ばし、持ちあげた。誰もが息をのむ。  だが、そのあとのやつの行動は予想を超えていた。  カエルは右腕を振り上げ、思い切り小さな緑の生き物の上に平手を打ちおろしたのだ。 「や!」 「ひい!」 「ああっ!」  女子高生たちは悲鳴を上げ、目をつぶったり俯いたり、後ろを向いたりイスから落ちるものさえ現れた。  私は恐怖にすくみながらも、昂然と頭を上げてやった。  やつと私の目がぴったりと合った。  相変わらずの無表情、いや、ほんの少し目が吊り上がっている。  私も頬に力を込めて睨みかえした。  悲鳴と喧騒を聞きつけた隣のクラスの女性教師が、 「どうかしましたか?」  と教室のドアを開ける。  やつは澄ましかえって言った。 「いいえ、何でもありません。お騒がせしてすみませんでした」  女性教師は怪訝そうな顔をしつつも自分の教室に戻った。  それを見届けてから、カエルは教壇を降りて、つかつかと真ん中の列の後ろのほう、つまり私のほうに歩を進めてきた。  私は思いきり目を見開き、きつく唇を結んで迎え撃つ心の準備をした。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加