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やがてカエルは赤いコップに手を伸ばし、持ちあげた。誰もが息をのむ。
だが、そのあとのやつの行動は予想を超えていた。
カエルは右腕を振り上げ、思い切り小さな緑の生き物の上に平手を打ちおろしたのだ。
「や!」
「ひい!」
「ああっ!」
女子高生たちは悲鳴を上げ、目をつぶったり俯いたり、後ろを向いたりイスから落ちるものさえ現れた。
私は恐怖にすくみながらも、昂然と頭を上げてやった。
やつと私の目がぴったりと合った。
相変わらずの無表情、いや、ほんの少し目が吊り上がっている。
私も頬に力を込めて睨みかえした。
悲鳴と喧騒を聞きつけた隣のクラスの女性教師が、
「どうかしましたか?」
と教室のドアを開ける。
やつは澄ましかえって言った。
「いいえ、何でもありません。お騒がせしてすみませんでした」
女性教師は怪訝そうな顔をしつつも自分の教室に戻った。
それを見届けてから、カエルは教壇を降りて、つかつかと真ん中の列の後ろのほう、つまり私のほうに歩を進めてきた。
私は思いきり目を見開き、きつく唇を結んで迎え撃つ心の準備をした。
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