17人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあ侑子ちゃんのああいうところはみんな好きじゃないけど。でもね、カエルって市長のご子息だって知ってた?」
「へ?」
「侑子ちゃんの親が教えてくれたんだって。それに国立の大学院まで行ってて、めちゃくちゃ頭いいらしいよ。高校教師なんてやってる人じゃないって」
茉莉ちゃんは言葉を選んでいるが、私はだんだん胸の辺りがむかむかしてきた。
「じゃあ、うちら泣き寝入りするのが正しいっての? 市長の息子だから? 学歴がすごいから?」
「私に食ってかからないでよ。ともかく侑子ちゃんとしてはことを荒立てたくはなかったみたい」
お腹から空気が抜けたようだ。
ばからしい。でも私は、何も侑子ちゃんのためだけにやったわけではないのだ。
「うん。ご忠告ありがと」
茉莉ちゃんにも若干嫌味を込めた言い方をしてしまった。
「5時からカエルに会うんでしょ。突っ張りすぎないで」
この子はこの子なりに私を心配しているのは分かった。でも、そう言われるとますます逆バネが働くのが私、佐久間美緒だ。
最初のコメントを投稿しよう!