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ホテル ミラコスタ
#7
ホテルミラコスタに着くまで、僕はどれほど道に迷ったことか。
東京は電車の路線が入り組んでいる。JR、私鉄、地下鉄、さらに人が多い。
これが地元なら、毎日が祭りだ。
ニチカはタクシーでホテルに戻ったようだが、そんな贅沢なんてできるわけがない。四苦八苦し、やっと辿り着いたミラコスタでチェックインし、部屋にたどり着いたのは、すでに21時になろうとする頃だった。
「遅いよ、圭太」
部屋に入ると、ドアの前で腕組みしたニチカが僕を睨む。
「ごめんごめん。道に迷っちゃって。東京って怖いよ」
「ファニー先生とご飯待ってたんだからね」
部屋はシックで、サイトで見たものよりずっと広々としていた。アンティーク風の間接照明があちこちに置かれ、雰囲気を出している。
間接照明好きの僕には、最高の雰囲気だ。
「ハーイ、圭太ちゃん。welcome to ミラコスタ。そして、1位おめでとう!びっくりはしないけどね」
革張りのソファに足を組んで座っていたファニーが、にっこりと微笑んで片手を挙げる。
「遅れてごめんなさい。永遠に着かないかと思った」
そう言って、鞄をソファの脇に置き、ファニーの向かいにドサっと座る。
「絶対、迷ってるよねってニチカちゃんと話してたのよ」
「田舎者丸出しで来たでしょ」
そう言ってニチカがぼくの隣には座った。
「残念ながら。高層ビルとか見上げてちゃったし」
「最悪。写真とか撮ってないよね」
「撮った撮った」
ニチカが、あちゃーと言って天を仰いぐ。
ファニーが足を組み換え、体を前のめりにする。
「だけどさ、例の人、さくらさんだっけ?その人も1位ってのはちょっとびっくり。やっぱりただもんじゃないねその子。しかも、ギフテッドじゃないんでしょ」
「本人はそう言ってる」
「へえ、努力家なのかしら」
「そんな生優しいもんじゃないと思う。あれは試験の戦闘員だ」
僕とファニーの話にニチカが割って入る。
「もうそんなことよりさ、お腹ペコリンなんですけど」
「ごめん、そうだね。行こう」
「let's go to dinner!」
ニチカが拳を突き上げ、3人は立ち上がった。
ホテルの中にある地中海レストラン『オチューアノ』。
客はそんなに多くはない。ディナーには少々遅いせいだろう。それでもレストランには活気があった。
レストランの内装は海底をイメージしているのか、海藻や泡をデザインした装飾がなされ、大クラゲのようなオブジェもある。ちょっと不思議な空間だ。
僕たちは個室に案内された。
「さてここで圭太ちゃんにクイズです」
いきなり、ファニーが言い出す。
「このレストラン、オチューアノの意味は?」
「イタリア語で、海」
「簡単すぎたな。では、このレストランの席数は?」
僕は記憶の中にあるレストランの風景を思い出す。
「入ってくる時見た記憶では、250席」
そこへスタッフが水を持って入ってきた。
「ねぇねぇ、ちょっと聞いていい?」
ファニーがスタッフに尋ねる。
「このレストランの席数、わかります?」
「はい、286席でごさいます」
ファニーが、してやったりと言う顔で僕を見る。
「ざんねーん、圭太ちゃん。なんか嬉しい」
すかさずスタッフが言う。
「個室の席数を抜けば、250席ですが」
「えっ、見えてない個室が見えた?」
「見えないけど、個室の数はわかった。個室の席数は同じとして計算しただけだよ」僕は続けて言った。「ちなみに、いま個室以外のお客さんは、115名」
スタッフは水を置きながら、僕の顔を怪訝そう見ると、困惑した顔をして答えた。
「えーと、ちょっとそこまではわかりかねます」
そりゃそうだろうと思ったが、間髪入れずにニチカ言っと。
「ううん、間違いない。彼が言うんだから」
店員がチラッと僕を見る。そして、アッという声を漏らした。
「もしかして、平野圭太さん・・・ですか?」
「そうよ」
ニチカが答えた。
「うわぁ、すごいなぁ。ご利用ありがとうございます」そう言うと、ちょっともじもじしながら、言った。「あの、よければ、サインとかお願いできますでしょうか」
「お安いご用だ!」
そう言ったのはニチカだった。スタッフはありがとうございますと満面に笑みを浮かべ、僕たちにメニューを広げた。
「おすすめは?」
ニチカが尋ねた。
「はい、ドリームゴーラウンジスペシャルディナーコースでございます」
「キャビアは入ってる?」
「申し訳ありません、入っておりません。トリュフはメインにかけてござきます」
「うーん、ゴールドキャビアってあります?」
スタッフが一瞬、固まるのがわかった。
「すみません、ちょっと聞いてまいます」
彼が部屋から出て行くと
「ゴールドキャビアをオーダーする女子高生、ニチカちゃんくらいだわ」
と、ファニーが笑った。
「それって、アルビノのチョウザメから採取された、数千尾に1尾と言われてるやつ?食べたことないけど」
「へぇ、チョウザメなんだ」
僕とニチカの顔をファニーが交互に言る。
「知識はあるけど食べたことない圭太ちゃんと、食べたことはあるけど何かよくわからないニチカちゃん。やっぱいいコンビだわぁ」
僕とニチカが、同時にファニーに向けて、ピースサインを出した。
スタッフが戻って来ると、あいにくゴールドキャビアはございませんと頭を下げた。
「じゃあ、普通のキャビア、3人分」
「かしこまりました。それはレストランの方からのサービスとさせていただきますので」
「あら、素敵。センスよく出してね。その量でレストランのセンスが問われるから」
ニチカに圧倒され、スタッフは、かしこまりましたと言って部屋を逃げるように出て言った。
ファニーはクスクス笑っているが、僕はスタッフが可哀想な気がしてならなかった。
「スタッフにプレッシャーかけるなよ、ニチカ」
彼女は水を飲み終えて言った。
「いいスタッフを作るのはお客よ。彼はいい経験をしてるってことよ。感謝されてもいいくらいだわ」
「こわっ!料理評論家だ」
僕の言葉にファニーは声を上げて笑った後、急に顔色を変えた。
「忘れてた!」
そう叫ぶと彼女は、部屋を急ぎ足で出て行ってしまった。
僕とニチカがキョトンとして顔を見合わせる。
「なんだろ」
「私は想像つく」
そう言っている間に、ファニーが帰って来た。
椅子に座ると、この私が忘れるなんて、と言った。
「当ててみようか」
ニチカがニンマリ笑い、言った。
「シャンパンでしょ」
「大当たりーっ!」
ニチカが僕を見て、ニヤリと笑った。
「ファニー先生は、シャンパンは水だって言ってたもんね」
「高い水だな」
僕はそう言って、目の前に置かれた本当の水の入ったグラスを持ち上げ、喉に流し込む。
冷たい水が喉から体の中に流れて行くのが見えるようだった。そういえば、今日一日、水分を摂っていなかったことに気づく。
心筋梗塞になってから、水を多く飲むようにと言われてはいたが、僕は水を飲むのがなぜか苦手だった。飲もうとしても、少ししか飲む気になれないのだ。
ニチカがオーダーしたドリームゴーラウンジスペシャルディナーコースは、17000円だ。それにシャンパン、消費税を含めたら、ひょっとして10万を超えるかもしれない。
僕の金銭感覚ではそれはもう天文学的数字だ。
「ホテルってなんでこんなに高いんだろ」
僕の言葉にニチカが平然と答える。
「うちの店よりここの方がぜんぜん安いけど」
「マジで。ぼったくりだ」
ファニーがぷっと吹き出す。
ニチカが僕の肩をグーで叩いた。
「痛いです」
「もう一発、いったろか」
「だってさ、牛丼換算だと33杯分だよ」
「なんでも牛丼を基本にしないでよ。シェフのレベルが違うから。何よ、ぼったくりって、失礼しちゃうわ」
ファニーが水の入ったグラスを口に運び、僕たちを眺めながら言った。
「ほんと、いいコンビだよね。吉本からデビューしてぇ」
「吉本はいやだなぁ。せめてワタナベエンターテインメント」
僕の言葉にニチカが口を曲げる。
「わ、た、し、は、オスカープロモーション!」
「それ、モデルとか多くいる芸能プロダクションだよね。じゃあ僕は、やっぱ、ジャニーズにするか」
「バクテンできないじゃん」
ニチカの言葉にファニーが割って入る。
「いまはバクテンの時代じゃないわよ。インテリ枠がいいわ。IQ385のジャニーズなんていないから」
「確かに!」
僕はガッツポーズをする。
ニチカが呆れたようにため息をつく。
「何が確かによ。青君の方がジャニーズっぽい」
「え、誰?青君って」
ニチカがファニーにブルーの説明する。
彼女はなぜか真顔になると言った。
「ふうん。ちょっと気になる人ね」
「めっちゃ美少年なの。っていうか女子みたい」
僕がフォローする。
「彼ね、トランスジェンダーなんだよ」
ニチカは知らなかったようだ。そうなの?と驚いた顔をした。言ってよかったのかなと、僕は軽はずみに口にしたことを少し後悔していた。
ファニーは顎に手を当てて、考え深そうな表情をつくる。
「そうなんだ。けっこう複雑な子だね。圭太君も入り組んでたけど、それ以上にラビリンスだわ」
「さくらさんがケアしてるって感じだったよね、圭太」
「うん。姉と弟・・・いや、妹なのか」
ファニーが小首を傾げる。
「さくらさん、だっけ。その人がまた奇妙なんだなぁ。ダブルだよね」
僕とニチカが同時に頷く。
僕は言った。
「インドと日本。でも、インド美人って感じかな」
「そうそう。それに見るからに賢そうで、リーダーって感じ。ジャンヌ・ダルクみたい」
ニチカの言う通りだなと思った。
さくらさんはまさに、ジャンヌ・ダルクだ。
ニチカが続けた。
「それとね、さくらさんの恋愛対象、女性らしい」
ニチカの言葉に、ファニーが眉を上げ、声を出さずに、ワオと言った。
「つまりその青君とさくらさんは永遠の友達でしかないってことね」
僕はニチカをチラッと見で言う。
「さくらさん、ニチカをすごい気に入ったみたいだったよね。可愛い子が大好物とかって」
「それよりさ、青君の方が圭太に熱い眼差し向けてたよ。あれは恋する女子だぞ」
僕たちの話しをファニーは、興味津々といった顔をして聞いていたが、
「恋愛戦線に異変ありって感じ」
と言った。
僕とニチカは互いに顔を見て合わせ、同時に蛸口を作った。
そんな僕たちにファニーが取り繕うように言った。
「でも大丈夫。圭太君はニチカちゃんのことが大好きでニチカちゃんは圭太くんなしでは生きていけない。2人は、強い絆で結ばれてるの。最強のカップルなんだから、こんなことくらいで揺らがないでよ」
僕たちは同時に言った。
「揺らいでないでーす」
「あらごめんなさいね」そう言った後、遠くを見るようなら目をした。「それとは関係なく、その2人、やっぱり気になるなぁ」
「何が?」
僕が尋ねる。
「実はずっと霊視してたんどけど、変なんだよね」
変って?と僕が聞く。
「2人の姿はぼんやりだけど見えた。インド美人と美少年。うーん、これはなかなかだなぁ」
「どういうこと?」
僕の問いにファニーは答えず、じっと宙を見つめたまま動かなかった。
1秒、2秒、3秒。
ふぅと息を吐き、彼女は顔をあげる。まるで潜水夫が海上に上がって来るように。
「ごめん。これは言えないわ。ほんとに申し訳ない」
ファニーはすごく疲れて見えた。霊視には大きなエネルギーを使うのかもしれない。しかし、言えないとはどういうことなのか、すごく気になる。
その時、胸ポケットに入れていたケータイのパイプが鳴った。
ケータイを開けると、なんと、そのブルーからだった。
『今日は出会えて本当に嬉しかったです。
平野君はボクの憧れですから。
明日も会えるなんて、本当にラッキー。
では、おやすみなさい。
夢でも平野君に会えますように。』
僕はケータイを閉じ、すばやく胸ポケットにしまう。なぜかドキドキしている自分がいた。
「怪しい、圭太」
ニチカが食い入るように僕を見る。
「怪しくないですから」
「誰から?」
僕は一瞬、ためらってから、ブルーだと答えた。ニチカが目を細め、手を差し出した。
「はい?」
「ケータイ、見して」
特に隠すようなものではないとわかっていたが、最後の一行をニチカはどう受け取るかわからない。負けず嫌いは、嫉妬深いとイコールだ。
「圭太君、見せた方がいいよ。大人の意見ね」
ファニーに言われ、僕はケータイをニチカに渡す。少しして、ニチカが口を大きく開けた。
「夢でも平野君に会えますように、だってぇ」
僕はファニーに助けを求める。
「ファニー、ヘルプ」
ずっと含み笑いを受けてべていたファニーが、ニチカを見て言った。
「その子の心は女の子だからね。まあ、圭太君のファンだと思えばいいんじゃない。ニチカちゃんだって、たくさんのファンがいるでしょ」
「ファンはいるけど、青君か可愛すぎるんだもの」
ファニーが僕に顎で、何か言いなさいと合図した。
「えっと。そうだね。でもさ、ニチカの方がぜんぜん可愛いです」
彼女は上目遣いに僕を見る。
「台本読んでる?」
「ほ、ほんとだよ。ニチカより可愛い女の子なんてこの世にいないって。ねぇ、ファニー」
言われたファニーは息を吸うと、ぷぅと吐き出す。そして、やれやれと言うように両手を天井に向ける。そして、ニチカを見て言った。
「ニチカちゃん、愛ってね、相手を信じることだよ。愛しきること。それができた時、何にも怖いものなんてなくなるわ」
その言葉を聞いて、ニチカは何もないテーブルをじっとみていたが、ふっと顔を上げると言った。
「頑張る、私」
ファニーが親指を立て、ニチカにgood!と言った。
僕はケータイを取り戻し、席を立つ。母親に電話しなきゃと言って、一旦、個室の外に出た。
レストランから出て、エレベーターの前でケータイに耳を当てる。
「母さん、僕です』
「どう、東京は』
「お祭りだね。それと、一応、1位になりました』
「わかってる。さっきね、事務局長から電話来たのよ」
なんと手際がいい。
「感想とか聞かれちゃったわよ」
「なんて答えた?」
「予定通りです、って」
「ちょっとぉ。謙虚にお願いしますよ」
「だってそうなんだもん」
「これから夕飯なんで、電話切るよ。明日も電話するよ」
母は電話切る前、アイラブユー圭太、とお決まりのセリフを言った。
電話を切り、パソコンに来ているメールをチェックする。普段使っているアドレスには、500件以上の未読メールがあった。
読む気も起きないのでそのままにする。一気に削除したい気分だが、家に帰ってからだなと思った。
実は僕はもうひとつアカウントを持っている。
それは本当に大事なところしか教えていないアドレスだ。高度なセキュリティのフィルターを装備し、ほぼ個人情報が漏れる事はないようにしている。
これは、ニチカもファニーも知らない。
そちらのアドレスには、3件だけメールが来ていた。ひとつは、ネイチャー誌からのものだった。
以前、ネイチャー誌から取材を受けた時、最新のニュースがあったら、記事になる前にメールで教えてほしいとお願いしていたのだ。その見返りとして、シークレットのアドレスを教え、僕がもし何かしらの発見をした場合、まずネイチャーに連絡するという取り決めをしていたのだ。
ネイチャーから来ていたメールに僕はワクワクした。それは最新の天文学に関する情報だった。
世界で誰よりもイチ早く情報を手に入れたのだ。嬉しくないはずがない。
僕は簡単なお礼のレスをして、ケータイを閉じた。
まさかそれが翌日に役立つとは、思ってもいなかったが。
部屋に戻るとすでに食事が来ていた。
「遅いよ、圭太」
「はいはい、ごめんなちゃい」
僕は席につきながら、母に連絡したこと、黒髭から母に連絡があったことなどを伝えた。もちろん、ネイチャーからのメールの話はしない。どうせ、関心はないだろうし。
僕の話を聞いてファニーが尋ねた。
「お母さん、ニチカちゃんや私とここに泊まるって知ってるの?」
「えっ、うーん、知らない」
ファニーが眉間にシワを寄せる。
「バレたらやばくない?」
「大丈夫大丈夫。さ、食べよ」
ミラコスタのディナーは絶品だった。キャビアは陶器の器に盛られていた。個人的には、これが世界の三代珍味か、という感想だ。
最後のデザートとコーヒーが運ばれて来た時、先延ばしにしていた話をしようと、僕は腹をくくった。
もちろん、明日のことだ。
「ちょっと、話があるんだ」
ニチカが僕を見る。その目は明らかに不安をたたえていた。女の直感というやつか。
「明日のことなんだけどね。実は今日、テストの後に会長に呼ばれて、明日のイベントの話し合いが行われたんだ」
僕は淡々と、そこで話し合われたことを話した。いつ怒りだすのかとヒヤヒヤしながら。
ニチカは意外なことに、怒り出さなかった。
「10代サミットは、たぶん僕が公の場で現在の事態に警鐘を鳴らすことのできる最初のチャンスになると思うんだ。こんなことはそうあることじゃない」
恐る恐る、ニチカを見る。
彼女はデザートの皿に盛られたケーキをフォークで削り、口に入れた。動揺している様子はない。
おかしい。
「わかった。つまり、明日はディズニーでデートできないってことね」
あまりに冷静な言い方が、逆に僕をビビらせる。
「う、うん。ぼ、僕も楽しみにしてたんだけど、ごめん」
「いいよ、サミットに参加してきて」
その言葉にあんぐり口を開けた。
絶対にこのままで終わるはずがない。
「ファニー先生と2人で思いっきり楽しむから。それに」
僕はファニーをチラッと見る。彼女は肩をすくめた。
「それに、圭太はディズニーで遊ぶよりやるべきことがあるよね。それをしてほしい。圭太は私だけのものじゃないのはわかってる。世界が圭太を必要としてる。それを私は、応援したい」
まさかそんなことを言うとは思っていなかったので、僕は感動しつつも、素直に受け取れなかった。きっと怒ってふてくされて、大変なことになるんじゃないかと予想していたからだ。
「ニチカちゃん、偉い!それが、愛ってものよ。ふたりで思いっきり楽しも!」
ファニーにそう言われ、ニチカがはにかんだように微笑む。
「私はわがままだけど、圭太の1番の応援団でありたいのよ」
あまりの予想外の言葉に、僕の頭はボウとなっていた。
「ニチカ、ありがとう。その気持ちを胸に明日は有意義なものにするよ」
「だ、け、ど」
「え?」
ニチカは頬杖をつくと言った。
「明後日は、ディズニーで遊ぼ。こうなるんじゃないかと思って、実はもうチケットも買ってあるし、ホテルも押さえてるから」
「えーっ!」
「さすが、ニチカちゃん」
ファニーが絶句し、拍手をした。
僕は、デザートを美味しそうに食べるニチカを呆然とみるしかなかった。
やはり、ニチカの方が一枚、上だった。
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