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「はーせくら!」  昼休みのチャイムが鳴って、昼食を持って教室を足早に出ようとした時。  後ろから親しげに話しかけてきたのはやはり東だった。 「昼どこで食ってんの?一緒に食おうぜ」 「…何で?クラスの奴らと食えよ、お前と話したい奴いっぱいいるだろ」 「だあから俺はお前と喋りたいの。行こうぜ」  何だこの自己中男。  心底イライラするけれど俺の腕を引く力が強くて振り払えない。  どこで食ってんの?と聞かれて、なぜだか素直にいつも1人で昼休みを過している場所を教えてしまった時はかなり後悔した。 「…昼飯、それだけなの?」  そう言いながら其奴は驚きながら俺の持つ菓子パンに視線を送る。  体質の問題なのかそれともSubの欲求不満のせいなのか、俺はあまり食欲が湧かない。  人並みには食べているつもりだけれど、世間一般で言えば少食…なのかもしれない。 「腹減らないの?」 「別に」  素っ気なく返事をしながらもぐもぐとパンを頬張る。  東はと言うとまじで?なんて言いながら信じられないというような目をしている。  それから大した会話をするでもなく、ただ2人で黙って昼の時間を過ごした。  気まず、なんて思うけれど此奴の表情からは何を思っているのか読み取れない。  早々にパンを食べ終えると、いつものように抑制剤を飲もうとした。  薬を取り出したところではっと我に返る。  いつも1人だから何も気にせず服用しているけれど、今目の前には此奴がいる。 「薬?」  案の定それを指摘されて、内心焦る。  けれどきっと抑制剤だとはバレない、大丈夫だ。 「まあ…」 「…それ、抑制剤?」  その言葉に体が反応しそうになる。  そんなわけないだろ、とか、何言ってんの、とかどうとでも反応出来たのに、咄嗟に言葉が詰まってしまった。 「ち…げえよ」  薬を隠すように手を握った。  目線を下に落として、それからペットボトルの水とゴミを持ってその場を去ろうとした。 「待って」  立ち上がったところでそう言われたけれど、体が動かなくなることは無い。  良かった、此奴はDomじゃない。  その言葉を無視して、俺がいつも昼を1人で過ごす人気のない階段から逃げようとしたその時。 「…“Stop”」  頭がぐらついて、気づけば床にへたりこんでいた。  何が起こったんだと、理解出来ずに俺は目を見開いた。
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