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「見つけた」  そんな声が聞こえたのは昼休み。  昨日とは違う場所、でも人の来ないような場所で俺が昼飯を食べているときだった。  俺は思わず食べていたおにぎりを吹き出しそうになったが何とか抑えて、距離をとるように退く。 「…んでいんだよ」  きっと睨みつけてやるけれどそれに怯む様子もなく東はぐいぐいとこちらに近づいてくる。 「一緒に昼飯食おうかなって」 「はあ?」  そんな言葉の意味が理解出来なくて絶句する。  そんなうちに自然に隣に座るから、俺は少し距離をとる。 「…昨日のことだけどさあ」  暫くの沈黙の後、口を開いたのは東だ。  こんな切り出し方に驚いて今度は食べていたものが変なところに入り込んでしまって、俺は咳き込んだ。  それを何とかお茶で流し込むと、東はまた話始める。 「昨日は悪かった」  1番に出たのは謝罪の言葉で、それがさらに混乱を招く。 「セーフワードも設定せずにコマンド使ったし、あんまりプレイとか好きじゃなさそうだったし」  あれはプレイとは言わないか、なんて呟く東を前に俺は唖然とした。  そんなこと言われるなんて夢にも思っていなかったからだ。  暫く何も言うことが出来なくて、呆然と東を見つめる。 「え、何か変な事言った?俺」 「え…いや…」  思わず言葉にどもってしまう。  俺の知っているDomはもっと傲慢で自己中心的で…Subに対して謝罪なんて、絶対しない。 「別に誰かに言ったりとかしないから安心して」 「…当たり前だろ」  ありがとう、そう言ってしまうのが何だか悔しくて目を逸らして強がってしまった。  本当は言わない、そんな言葉を聞いて安心した。  でもそれを悟られたくなかった。 「まあこれからも仲良くしようぜ、友達として」 「は?」 「え?」 「お前と友達になった覚えないんだけど」  意味のわからないことを言い出す東を睨みつけると、東は何とも思っていないようにええ〜、なんて言い出す。 「友達でいいじゃんもう。もし困ってることあれば助けるし、友達としてもDomとしても」  そんなことを吐かす目の前の男に俺は呆れて溜息を吐いた。 「そんなこと、一生無いから」  そう言って俺は荷物を全部持ってそこを立ち去ろうとすると、待てよなんて言って後ろから東が追いかけてきた。
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