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「支倉〜」  俺の名前を呼んだのは勿論東で、授業が終わり早く帰ろうと支度をしていたときだった。 「…何?」 「一緒に帰ろうぜ。お前も電車だったじゃん」 「絶対嫌」  溜息を吐いて東の横を通り過ぎる。  けれどそれを見越したように東もリュックを持ってすぐに俺の横に並ぶ。 「いいじゃん。5分発のやつ?」 「そうだけど」  はあ、と軽く溜息を吐きつつも、ここで逃げようとしてもおかしいから仕方なく2人で廊下を歩く。 「東じゃあな〜」 「お〜、じゃあな」  なんて、度々東は声をかけられては手を振って皆に挨拶をしている。  俺以外にも帰れるやついるだろ、と思いつつもそれを口にしても意味が無いことはわかっているから何も言わないでおいた。 「東!お前部活入れよ〜」 「まあ考えとくわ」 「そう言わずにさあ…」  なんてまた話しかけられて今度は足まで止めた…というより、止めさせられているが、俺はお構い無しにずんずんと進む。  下駄箱まではあと少し。  このままなら一緒に帰らなくて済むかも…と思って早足になる。  学校指定のローファーを下駄箱から取り出し、代わりにスリッパをしまう。  ローファーを履いて歩き出そうとした時。 「支倉!ちょっと待てよ」  げ、なんて思いつつ振り返って、しょうがなく東がローファーを履くのを待つ。 「悪い悪い。行こうぜ」  そう言って2人で校舎を出る。  結局コイツと帰ることになってしまったことに不満と疑問を抱きつつ、向こうが話しかけてくる度に適当にそれに返す、それの繰り返しだった。 「支倉は部活やってねえの?」 「やってない」 「へえ?運動出来そうなのに」 「別に。お前は?やればいいじゃん」  さっきだって知り合いらしい人から勧誘だってされていたし、体育の授業を見ていても運動が出来るタイプのようだった。  部活でも何でもいい、俺と帰れないような何かが放課後にあってくれればいいのに。 「まあやらないかな。前の学校でも帰宅部だったし」 「…あっそ」  心の中で舌打ちしながら、そこから特に盛り上がる会話もあるわけなく駅に着く。  このテンションのまま電車も同じかよ、と思いながら俺は遠慮なくリュックから単語帳を広げる。  それに何か突っ込むことも無く、東もスマホを触り始める。  電車に揺られて約20分、その間会話は特に無く、東はじゃ、と言って電車を降りていった。  なんだアイツ、と思いながら俺は単語帳に目を落とした。
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