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「あ、支倉くんちょっと待って!」  お疲れ様した〜、そう言ってバイトを上がろうとした俺を引き止めたのは店長だ。  何かあったっけ、シフトの話かな、なんて思いながら返事をして振り返った。 「何すか?」 「昼に来たDomくんの話!」  はあ、なんて溜息にも似た相槌を打つ俺に、店長は軽く笑う。  何の話だろうか、次に出る言葉を待つ間にも溜息が出てしまいそうだ。 「最近はよく眠れてる?」  しかし飛び出たのは予想外の言葉。  それに驚いて暫く言葉が出ない。 「え、あ…まあ」 「なら良かった。ちょっと隈薄くなったからさ」  俺の顔を見ながら微笑んでくる店長。  そんな彼の話と、Dom…東の話が何の関係があるのか分からなくて、俺は余計に困惑する。 「もしかしたら、あのDomくんのおかげなのかな〜って思ったんだけど」 「はあ?」  思わずそんなに口調になってしまって、すぐにすみません、と訂正する。 「あはは、別に気にしないで。…で、違った?」 「…まあ、そうなのかも…ですね」 「そっか。…ねえ、あの子に仮パートナーになってもらったら?」  それは東からされた提案と同じもの。  まさか店長からそんなふうに言われると思わなくて、俺はびっくりする。 「…いや、それはちょっと…」 「えー?いいと思うけどなあ、僕は」  そんな言葉に俺は黙り込んでしまって、言葉が出ない。  東と、パートナーなんて考えられない。   「まあこれは支倉くんの問題だからあんまり言わないでおくけどさ。困った時は僕に相談してね、いつでも!」  じゃあお疲れ様〜、なんて言って店長は店の方へ出ていく。  俺はそれをぼんやりと目で追って、帰ろうと荷物を持ち直す。  店長は、俺に深く干渉しすぎない。  でも、同じSubとして気を使ってくれて、なんというか…良い人だ。  けれど、俺はDomとパートナーになるなんて考えられない。  はあ、と溜息を吐いて裏口から店を出た。 「お、来た。はーせくら」  驚いて声の方を見る。  いや、見る前から誰がいるかなんて、声で分かっていた。  なんで、お前がここにいんの。 「…東」
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