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「支倉おはよ〜」  月曜の朝。  いつものように電車に揺られながら英単語帳を眺めていた時だった。 「…はよ」  車両を変えて、暫くして東に見つかってを何度か繰り返して、もう俺は面倒くさくなって車両を変えることをしなくなった。 「今日はバイトあんの?」 「どっちでもいいだろ」 「無いってこと?」  話聞いてんのか、と睨むとくすくすと東は笑っている。  実を言うと今日はバイトの無い日だった。  本当は入れようと思ったけれど、店長にやめておけと止められた。  それを押し切ってバイトをしたい…というわけでもないから素直に従った。  ちょうどテストも迫っているし、今日は勉強でもしようと思っていたところだった。 「な〜、バイト無いなら放課後どっか行こうぜ」 「無理」 「何か用事でもあるわけ?」 「とっとと帰りたい」 「直球すぎんだろ」  ぶ、と吹き出して笑う東にうるさい、と睨む。 「勉強でもすんの?」 「…まあな」  はあ、と溜息を吐きながらそう答える。  真面目だな〜なんて言っている東を横目に、視線を単語帳に戻す。 「じゃあ一緒にやろうよ」 「…え?」  まさかの提案に、思わず声が漏れる。  そんなふうに言われると思っていなかったし、というかそもそもコイツって勉強するタイプなのか。 「おい、今失礼なこと考えてるだろ」 「考えてねえよ」 「ほんとに〜?」  嘘だけど、と言いつつまた東を無視する。  なあなあ、と言って俺の方を覗き込んでくる。  嫌でも視界に入ってくるから、小さく溜息を吐きそうになった。 「うるさい」 「酷いな〜」  払い除けるように手を振ると東は素直に顔を離し、仕切り直しというふうにで、どう?なんて聞いてくる。  これは聞かなきゃ鬱陶しいやつだ。  てか勉強なら他のやつとでもやれよ、そもそも何でこんなにこれに構うんだよ、それに…、と次々に色々な考えがめぐるけれど声に出すのも面倒だった。 「…分かったよ。今日だけな」 「まじ!?やった〜!色々教えてくれよ」 「今日だけ、な」  釘を刺すように強調すると東は軽く笑った。
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