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「はいはい、お前らスマホしまって席つけ〜」  がらがらと教室の扉が空いて新たな担任が教室に入ってくる。  高校2年生、1日目。  大して変わりもしない日常も、騒がしい周りの雰囲気も鬱陶しくて憂鬱だ。  クラスメイトは教師の言葉に従って自分の席に着いた…が。  また教室内はざわざわと騒がしくなり始める。  その正体は教師の隣でにこにこと微笑んでいる見覚えのない男のせいだ。 「今日からお前らの担任になる早川だ。そんなことより、みんな察してるだろうけど転校生だ」  ちらりと教師がその男に視線を送ると、その男は口を開いた。 「初めまして。(ヒガシ) 潤耶(ジュンヤ)です。よろしくね」  かっこよくない?イケメンだ、なんて周りは賑わっていて、俺はそんな騒がしさに耳を塞ぎたくなって机に突っ伏す。 「みんな仲良くな〜。席はあそこ。支倉(ハセクラ)の後ろな」  そんな言葉に、突っ伏していた体をすぐに起こした。  支倉は俺だ。  何でこんな奴が俺の隣に、最悪だと頭を抱える。  小さめに溜息をついているうちにそいつは席まで辿り着いていて、周りと軽く挨拶を交わしている。  ちなみに俺は後ろから2番目、転校生が1番後ろの席だ。 「…支倉くーん」  とんとん、と肩を叩かれて内心触るなと苛立ちながら軽く振り返る。 「俺東。よろしくな」 「…おー」  俺はよろしくなんてするつもりも無いから素っ気なくそれだけ返す。  無愛想な俺に周りは俺を睨んでいるが、気にする事はしない。  HR、俺はぼんやりと下を向いていると時間が過ぎて、今日はそれで解散。  周りに人が集ってくる前に俺は教室を出ようと殆ど何も入っていないリュックを背負って教室を出ようとした。 「ちょ、支倉待っ…」 「東くーん!」  俺を呼ぶ声が聞こえた気がしたけど聞こえなかったことにして無視をした。  そうこうしているうちに周りはあっという間にクラスメイトで囲まれている。  俺は振り返ることも無く学校を出た。  今日はこのままバイトに直行。  家には、帰りたくなかった。
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