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 帰るかー、そう言ったのはもう18時。  父親は明日まで帰ってこないから早く帰必要も無い。  帰ったら適当に食べてさっさと寝よう、そう決心すると同時に欠伸が零れた。 「オイオイ、眠いのかー?」 「ねみぃだろ。お前と違ってちゃんと授業起きてんだよ」 「はあ?俺も起きてるけど?」 「嘘つけ、プリント回す時うとうとしてるの知ってるからな」  そう言ってみると東は気まずそうに黙り込む。  その様子に思わずぷっと吹き出した。  乗るつもりだった電車に乗り込んで、空いている座席に座ると眠気がどっと襲ってくる。 「寝る?肩もたれていいよ」 「ん〜…寝ない…」 「寝そうじゃん、寝てなよ」  んん、と自分でも返事になっていないのが分かる。  起きようと努力したけど、それも無駄だったようで俺は早々に意識を手放してしまったらしい。 「支倉〜」  呼ばれた声に重い目を開く。  うわ、寝てしまったと後悔すると同時に東の肩にもたれかかっているのに気づく。 「…悪い」 「いーえ。よく寝てたね」 「…まあ」 「起こしてごめんな、俺もうすぐ降りるからさ」 「大丈夫」  軽く伸びをして、スマホで時間を確認する。  俺の降りる駅まであと15分。  20分程寝ていたようだ。 「最近寝れてる?」 「…まあまあ」 「そ、良かった」  隈もちょっと薄くなったな、なんて言って微笑む東が何だか眩しい。  電車内にアナウンスが流れて、暫くすると停車する。 「じゃ、明日。また勉強教えてよ」 「無理」 「ひでえ」  軽く話をすると東は手を振って電車を降りていった。  俺はスマホを取り出して意味もなく弄る。  誰かと勉強なんて初めてだ。  とは言っても教え合う、というわけでもなくむしろ俺が東に教えてばかりいた。  お前授業聞いてんのか、と言うと聞いてるよ!なんて逆に怒ってくるからそれが少し面白かった。  どうして東はこんなに俺を構うのだろうか。  Subだから?好奇心?それとも後から本性を見せるのか。  分からないけれど、Domの東を拒絶出来ない自分のことも不思議に思った。
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