70人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
4
「来週の土曜って暇?」
気づけば5月も終わって6月。
曇り空の日が続き、何となく自分の気分も下がる。
授業が終わり放課後に入ってすぐ。
東は俺を逃がすまいと強めの力で俺の肩を叩いた。
「忙しい」
「嘘つけ!」
「嘘じゃない」
「じゃあ何があんの」
「バイトでーす」
はあ?なんて不満気な表情を無視して俺はリュックに荷物を詰める。
バイトがあるのは事実だ。
それに土曜のうちに買い物とか掃除とか、諸々全部済ませて日曜は休みたい。
今週に限らず毎週そんな感じだ。
「じゃあいつが暇なの」
「お前に構ってる時間はどこにもないかな」
「何でだよ!」
ぎゃーぎゃーと喚く東を無視して俺はリュックを背負う。
席を立つとじゃ、と東の横を通り過ぎ…ることは出来なかった。
「こらこら待て、一緒に帰るぞ」
「…はよしろ」
嫌だと言ってもついてくるし、抵抗するのは無駄だと知っているから何も言わない。
はあ、と呆れて溜息を吐くのと同時に、クラスの女子が東ー!と名前を呼ぶ。
「今から時間ある?」
「え?いや…」
「あるだろ」
なぜか渋っているような東に俺はそう吐き捨てる。
「じゃあさ、ちょっとでいいから時間くれない?」
こっちに視線を向けてくる東に溜息を吐いて、いや行けよと言った。
「…分かった。支倉待ってて」
「はあ?やだよ」
「待ってて!」
釘を刺すように言われてしまって、しょうがなく分かったよと返事をする。
ごめん、借りるねー!なんて言いながらその女子は東と一緒に教室を出ていった。
俺は1度立った席に座ってスマホを弄る。
今頃告白でもされているのだろうか。
まあ確かにあいつは顔立ちも整っているし、コミニュケーション力も高くてフレンドリーで誰にでも優しい。
おまけにDomだし、それなりにモテるだろう。
あの女子とくっついて俺から離れてくれないかな。
そう思うけど無駄だろう。
これまでも何度かこういうことがあったが、その度にあいつは告白を丁重に断って、その後は俺と一緒に帰る。
お決まりの流れだった。
このまま隣にいたらいつか背中を刺される日が来るのでは。
いい加減俺から離れてくれよ、なんて思いつつ、俺は机に突っ伏した。
最初のコメントを投稿しよう!