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 迎えた土曜。  何と俺はなぜだか東と待ち合わせをしていた。  というのも、タイミング良くというか悪くというか、俺のバイトのシフトが日曜に変えられてしまったのだ。  東と合わない口実にバイトは土曜にしたかったけれど、でも店長に頼まれては断れない。  俺が渋々分かりました、そう電話越しに返事したのを東に見られてしまったのだ。  逃げる道もなく、俺は1回だけだぞと強く言ってからこうして今日会うことになったのだ。  どれもこれも昼休みに電話をかけてきた店長のせいだ。  けど店長はいい人だし悪く言えるはずもなく、俺は溜息をなんとか飲み込みながら待ち合わせ場所に向かった。 「良かった、ちゃんと来たな」 「いや来るよ…何、ドタキャンしてもいいわけ?」 「良くない!来てくれてありがとな」 「早く行って早く帰ろ」 「おい?」  向かう先はショッピングセンター。  そこには映画館もあって、東は最近公開されて映画を見に行きたいらしい。  東を置いて歩き出すとすぐに横に並ぶ。  待ち合わせ場所からすぐに目的地について、先に映画のチケットを買った。 「…なんかお前背高くない?」  映画までの時間、適当に入ったアパレルショップで服を見る。  ふと鏡に写った自分たちを見てそう口にする。  東は俺よりも5センチ程高いがそういえば今日はいつもよりもう少し高く感じる。 「え、いきなり褒められた」 「いや褒めては無い」 「いやそこは褒めてるってことでいいでしょ」  なんて言いながら、今日はコレ履いてるから、と言って見せられたのは少しゴツめのスニーカー。  底があるらしくその分身長も盛られているらしい。 「…いや詐欺じゃん」 「ちょっと?これはお洒落です〜」  ああそう、と興味の無さそうな返事をすると後ろからまた怒ったような声が聞こえたけど無視。  手元にあった服を何となく手に取る。 「似合いそうじゃん、それ」 「そうか?」 「うん。こっちの色とか」  東が手に取ったのは色は違うが同じ服。  俺はグレー、東の持っているものはパステルピンクだった。 「…いやピンクは無いだろ」 「えー?ありだと思うけど。明るい色似合うじゃん」 「いや着たことないけど」  似合う、なんて断言するけど俺はピンクなんて1度も来たことは無い。  学校で着るカーディガンも黒かブラウンか、そんな無難な色しか持っていない。 「じゃあ今着てみてよ」  そう言って押し付けられた服を片手に試着室まで背中を押される。  抵抗することも出来ず俺は試着室に押し入れられてしまった。
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