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「あれ、支倉?」
そう声をかけられたのは、俺が電車に揺られて2駅を過ぎたところだった。
壁に体を預け、単語帳に向けていた視線を声の方に向けた。
目の前にいたのは見慣れない顔…昨日、クラスにやってきた東とかいう男。
「おはよ、支倉も電車なんだ?」
「…はよ」
最悪…なんて思いつつも、無視するのも流石にいかがなものかと思って、小さく返事をした。
「電車、いつもこれ?1人?」
「…まあ」
「そうなんだ」
なんて言って当然のように俺の隣に立つ。
いやどっか行けよ…と思ったけれど、それ以上何を聞くでもなく、俺の勉強を邪魔しないから何も言わずにいた。
そこから少しすると学校の最寄り駅に着く。
電車を出て、改札を通り抜けて学校までの道を歩く。
学校までは徒歩5分程。
隣にはまだ当たり前のように東が歩いている。
「…あのさ」
隣に歩く其奴を見かねて口を開いた。
「何?」
「…俺と一緒にいても楽しくなくない?」
俺より少しだけ高い其奴を、横目に見る。
俺は此奴と仲良くなる気なんて更々ないし、何を話せばいいかも分からないし何か話そうとも思わない。
「俺といてもつまんないよ。お前と仲良くしたい奴なんてどんだけでもいるだろ」
「でも俺は支倉と仲良くなりたいよ」
なんて、他所以外に飛び出た言葉に驚いて目を見開く。
そのまま東の方に目を向けた。
ばちりと目が合って、何と言うか気まずくてすぐに目を逸らした。
「…何それ」
呆れたようにそう言うと、隣から笑う声が聞こえた。
「何それ、ってそのままの意味だけど」
「…意味わかんねえな、お前」
「なってくれないの?友達」
「なるつもり無いけど、俺は」
目線は前へ、少し大股に早足に歩くけれど、それにも隣の此奴はちゃんとついてくる。
溜息が出そうになるがそれを抑える。
気づけば学校の前、2人して門をくぐると近くにいたクラスメイトがこちらによってくるのが分かる。
げ、と思うけれどここで逃げるのも不自然だろう、目当ては東だろうけど。
「東…と、支倉も、おはよ!」
東がおはよう、た応える隣で俺も一応挨拶をする。
今一瞬俺の事忘れてたな、別に無視されてもいいんだけど。
目の前のクラスメイトは自然と東の隣に並んで親しげに話始める。
俺はそれに内心感謝しながら、靴を上履きに替えてから2人より早足で教室へ向かった。
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