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ピキ、とガラスのコップにヒビが入ったように私の表情がより硬くなる。
これでも一応笑っているのだ。精一杯笑っているのだ!!とは言えず、「すいません」と小さくこぼせば「あー、まあ、もういいや。時間ないし次行こー」と呆れたようにその場を去っていくチェキを持った他部署の人たち。
ひとり、残された私はポツンと立ちすくむ。が、仕事が残っているので自席についてデスクに置いてある請求書の束とすぐに向き合った。
カタカタカタカタカタカタ
シュッシュッシュッシュッ
プルルルルルプルルルルル
17:15
パソコンをシャットダウンして画面を閉じる。お疲れ様です、と残っている人に声を掛けて5階から1階までエレベーターで降り、会社を出れば生ぬるい風と共に桜がひらひらと落ちてきた。
たまたまに掌に乗った桜の花びらを指でつまんで藍色の夜空に浮かべてみれば、桜独特のピンクが映えてとても綺麗に見えた。
「おー、絵になるねぇ」
顔のすぐ近くに圧を感じ、思わず耳元を手で覆ったら「いや、ビビりすぎだろ」と、いや、ビビりますし!!予想もしてなかったですし!!
ゆっくりと耳元から手を外して「お疲れ様です」と軽く頭を下げたら「ん、お疲れ」と、その人はゆるく笑った。
……はあああああ、今日も、てか、仕事終わりもくたびれた様子もなく、ほんとにほんとにかっこいい。ほんとに、どタイプすぎる。
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