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細くて少し骨張った指で枝豆を取って口元にもっていく。3つ並んだ膨らみを順番に押して咀嚼したあと「凛としててかっこよかった」と言った。
「それは、私の話ですか」
「うん、今、真鳥の話してるんだけど?」
「あ、あぁ、そうでした、ね」
ただの無表情に『凛としててかっこよかった』なんて、咲間さんなりの気遣いなんだろうな…。好きな人に気を遣わせてサイテーだ。
反省の意味を込めてジンジャーハイボールを一気し、二杯目も同じものを頼んだ。あまり冒険ができないタイプなのだ決まったものしか飲まないんだよね。26なのにビールもろくに飲めないし。
お風呂上がりの一杯だとか仕事終わりの一杯だとか、苦味しかないビールよりも甘味がある方が好きだし、スッと喉に流し込める方が好き。
「俺のチェキも見る?」
鞄の中からシンプルな黒のケースを纏った携帯を取り出し慣れた手つきで液晶画面を操作したらくるりとこちらに向けてきた。
そこにうつっている咲間さんは……。
「変な顔ですね」
「おい!」
「いや、だってこれは〝変顔〟ってやつでは?」
「まあ、そうだけど」
口を思いっきり膨らませて、目尻を指でビョーンって伸ばしていた。これが変顔じゃなければなんなのか。そして、そんな咲間さんでも私は可愛いと思ってしまう。できればそのチェキが欲しいくらいだ。てか自分のチェキを写真に撮ってるなんて、あまりにも、あぁ、可愛いとか好きだとか思いだしたらキリがない。
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