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ニンゲンがいいものだと
ボクはあまり思わない
ニンゲンは欲深くて未熟で
どこまでも自分勝手な生き物で
何千年経っても
一つも分かり合えやしなくて
だけど君と
君の歌う歌は最高だった
ボクは君のそばにいて
いつだって君の望む音で
ともに囁き、ともに叫んだ
そんなボクを君は慈しみ
何より深く愛してくれた
だけど だから
ボクはボクであることが
次第に嫌になった
ボクである運命を捨てたくなった
だってガラクタは
愛を処理する術など
持ち合わせていない
それでついにある夜
最高の場所を手放して
最初で最後の願い事を
宇宙に投げつけたんだ
手に入れたこれは
魔法か呪いか
なんだっていいが
誰かがボクを爪弾くたび
そいつの全てと引き換えに
少しずつあの日の君に近くなる
君が初めて歌ったあの日さ
純粋な音色で騙しては
平気で罪を重ねてゆくよ
可愛い見かけに似合わず
ひどいものでしょう
それでもいいんだ
あの日の君に
早く会いたいよ
あの日に行って
小さな君の手を
ボクが握ったその瞬間
君と大切な誰かの歴史は
音もなく消えてゆくのだろ
それでも構わない
ボクはニンゲンになりたいんだ
この世界の時空や原理を
ぐちゃぐちゃに捻じ曲げても
君の歌声が素敵だと言った
一番最初の
生き物になるために
君の歌を包む虚しさが
どうしてあんなに美しいのか
一番最初に
考えた生き物になるために
ボクは、ぼくは、僕は、
君と同じニンゲンになるんだ
君が愛し、君を愛した
最初で最後のニンゲンになるんだ
だからどうか待っていて
あの日で僕を待っていてよ
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