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ド変態お嬢様 宮藤愛姫
「悠をどこへやった⁉︎ 弟を返せ!」
怒り狂った真田陽が殴りかかってこようとするのが見えたので、執事の矢野は鉄の門扉を開けて主人である私を中に押し込み、自分も間一髪避難した。鉄格子の向こうで悔しがる陽はまるで凶悪な囚人のようだ。
「開けろ! 出てこい! 卑怯者ども!」
「そこから一歩でもうちの敷地に入ったらあなたの方が犯罪者ですからね。罪名は住居不法侵入です」
「誘拐犯に言われたくねえんだよ!」
矢野に一喝した後で、陽は私の方にも殺気を向けた。
「どういうつもりだ! テメエら、いったい何を考えてやがる!」
「……あなたがいけないのよ、私に逆らうから。そういう男は苛めたくなるの」
「ド変態ですからね、姫は」
「矢野、あなたは口を出さないで」
引っ込んでなさい、と矢野を向こうへ追いやって、私は噛みつきそうな顔をした陽と鉄格子越しに向き合った。
「……まだ俺と遊び足りねえか」
「全然、足らないわ」
私は強気に微笑んでみせた。
「だから──来なさい、私の家へ」
「……はァ?」
眉間にしわを寄せる陽の鼻先を指差し、私は彼に命令するように言い放つ。
「あなたをこの家で飼ってあげる。私の下僕になりなさい!」
辺りがシーンと静まり返った。
本気でドン引きしたような顔をして、陽が呟く。
「……何言ってんだ、この変態女」
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