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「うふふふふ……♡」
布団の中で、堪えきれない笑いをこぼしちゃう。
ああ、なんて幸せな夢。
私と真田さんが両想いだなんて、こんなに幸せなことが他にある?
「何笑ってんだ? 不気味だな」
その時ふと、ベッドのそばで真田さんの声がした。
ドキッとして、反射的に布団を跳ね飛ばしてベッドから起き上がると、そこには綺麗さっぱりと身なりを整えた真田さんが私を見下ろしていた。
「な、な、な、なんで真田さんが⁉︎」
「さっきノックしたぞ。入るぞとも言った」
回想に耽っていて、聞こえてなかった。
私は恥ずかしくなって、さっき跳ね飛ばしてしまった布団を再びぎゅっと抱き抱えた。
「や、矢野は?」
「昨日の一件で検査入院になっちまったんだってさ。お嬢の執事になってから一日も休んでなかったから、この際ゆっくり休むって」
あのいつも冷静な矢野が完全に不意を衝かれたのには驚いた。
それだけ、私のことで頭がいっぱいになっていたということなのだろうか。
「大丈夫かしら、矢野……」
「一番の心配は労災が下りるかどうかだって言ってたな」
「大丈夫そうね」
彼は見た目よりもタフだから殺しても死なないような気がする。
「そんなわけだから、今日は俺があいつの代行をするように命じられた」
「代行……?」
真田さんは照れたように少し顔を赤くしながら咳払いした。
「今日は俺がお嬢の執事だ」
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