カツアゲって、揚げ物じゃないんですか?

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 私は緊張でずり落ちそうになったメガネをクイっと直し、「ごめんなさい、今のは冗談です」と取り繕った。  すると──。 「ぎゃははは!」  彼らは一斉にバカ笑いを始めた。 「こんな地味な顔して、面白えこと言うじゃねーかこいつ!」 「金なら腐るほどあるって、お前のどこにそんなもんがあんだよ。貧乏くさそうなナリしてよ」 「笑かしてもらったから行っていーよ。地味子!」  その貧乏くさそうな地味子から金を借りようとしたくせに、彼らは勝手なことを言う。  ともあれ、難は逃れた。  だが「ではごめんあそばせ」と笑顔で通り過ぎようとした時──私は聞いてしまった。 「ホント変な女だな。こんなに地味でブスなくせに」 「ああ。マジで女としての魅力ゼロ」 「金も魅力もなかったら人生終わりだな。可哀想に」  ──可哀想? この私が?  ヘラヘラとして何の苦労もせず他人から金品を奪うような底辺の輩から同情を受けるなんて──お嬢様のプライドが許さない。  そんな屈辱を受けてまで、逃げたいとは思わない。 「人生終わってるのはどちらかしら?」  私は立ち去りかけた足を止めて、彼らを振り向いた。その瞳にはキラキラとした強い意志を感じさせる光が溢れていたと思うのだが、残念ながら特殊なメガネで隠されている。 「何だてめえ」 「私がもし、お金を持っていたら──どうします?」  私は不良たちの顔を一人一人睨みつけた。 「もし私が嘘をついていなかったら──先ほどの無礼な言葉を取り消して、土下座で詫びてもらえます⁉︎」 「面白えな……見せてみろよ」  不良たちも土下座と聞いて笑みを消し、凄み返してきた。    売り言葉に買い言葉。  私はカバンの中からキラキラの装飾がついた札束入りの長財布を取り出そうとした。  その時だ。 「そこ──邪魔なんだけど」  私の背後で、若い男の声がした。不良たちの目がそちらに向いた瞬間、彼らの顔色が変わった。
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