告白

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 空を見ると、もう夜に近い色に覆われつつあった。    待っていると信じていたゆみはいない。  冷たい水をくれた愛姫も、彼女を愛している執事が連れ去ってしまった。  彼女は何もかも持っている。金も、愛も。  真田のそばには誰もいない。  公園の水で洗い流した汚れの下には、ひび割れた傷だらけの指先。  執事の言う通り、汚い手だと思う。  言葉も出ないほどに。  どんなに頑張ったとしても、誰も褒めてなどくれない。  何も持たない自分には、誰もそばに寄り添ってくれない。  誰も愛してくれない。  本当に孤独だった時はそんなこと一度も考えなかったのに、待っている人がいるかもしれないと思った瞬間に真田は気づいてしまった。  ……自分は孤独だ。  時計の針が6時を過ぎた。  目を閉じて、彼は切望した。    誰か、今、俺を抱きしめてくれないか。  嘘でもいい。  俺を好きだと言ってくれ。  誰か。
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