告白

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「もう来ないかと思ってた」 「ごめんなさい、私の方でもいろいろあって……でも、どうしても来たくて」    俺のために来てくれた。それだけでいい。  不器用な真田にはその一言が口に出せない。 「それから、もう一つだけ謝りたいことがあるんです」 「謝りたいこと?」 「この、メガネなんですけど……」  ゆみは自分の耳に引っかかっているビン底メガネの分厚いフレームを撫でた。 「外してきて欲しいって言われていたのに、やっぱり外せなくて……」 「そんなこと、別にいいよ」 「いいんですか?」 「メガネがあったってなくたって、あんたはあんただろ」  以前、一度だけゆみが真田に素顔を見せそうになったことがある。  一瞬だけだったので真田はよく覚えていないのだが、その時に見た瞳がとても綺麗だった気がするのだ。  それなのに不良たちにブスだと言われても彼女が反論しないことや、愛姫と自分を比べて卑屈になっている姿に違和感があった。  もしかしたら彼女は近眼すぎて、自分の顔をよく認識していないのではないか。    だとしたら勿体無い。  自分が確認して、彼女に教えてあげたいと思った。  ゆみは綺麗だ、と。  しかし、真田のそんな軽い思いつきが彼女にとっては相当の負担だったようだ。 「良かった……。もし嫌われたらどうしようかと思いました」  大袈裟な、と笑い飛ばしそうになったけれど、ゆみは本気で震えていた。  「嫌い? 何で」 「だって……」  彼女は小さな声で言った。 「私の顔を見たら、真田さんはきっと私のことを嫌いになるから……」
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