愛姫の行方

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 私は心底呆れつつ、最後の説得を試みた。 「みなさん。もうそんな不毛な争いはやめて、仲良くしませんか? あなたたちさえ悪いことをしなければ、真田さんもあなたたちに口出しすることはないと思います。私を攫ったことだって、謝れば許してくださると思います。誰も怪我をせず、平和的に解決できますよ。せっかく私を楽しいところに連れきてくださった皆さんが傷つくのは、私も見たくありません。どうかお考え直しください」 「地味子……」  不良たちは私を見つめて、神妙な顔をした。  分かってくれただろうか。  と思った瞬間。 「可愛い〜〜〜〜〜!!」  彼らは腰砕けになり、バタバタとソファーに倒れ始めた。 「優等生タイプの地味子が可愛すぎて何も頭に入らん」 「それな」 「真田が羨ましすぎる。やっぱあいつは俺らの敵だな」 「真田を倒して、地味子を俺の嫁にしてえ〜!」  私の演説はかえって彼らの闘志に火をつけてしまったかもしれない。  どうしてこうなるの?  やはり自力で逃げ出すしかない。  私はそっと立ち上がり、ドアに向かった。 「おい、どこ行くんだよ地味子」 「ちょ、ちょっとトイレに」 「逃げ出す気じゃねえだろうな?」 「ま、まさか! そんなまさか、です!」 「怪しすぎるだろ……」  不良A〜Gの視線が刺さる。  トイレに行くと言えば出してもらえると思ったのに。 「このままでは、お漏らししてしまいます! お願いしますからトイレに行かせてください!」 「ぐはっ! 地味子がエロすぎてやべえ!」  どこがエロいのかさっぱり分からないけど、とにかく全力で逃げたくなった。 「失礼します!」 「ダメだって一人じゃ。俺がついてってやるよ」  強引に出ようとした私の腕を不良Aが掴む。  見張りつきだが、一応カラオケルームの外に出ることには成功した。  あとはこの不良Aをどうにかするだけだ。    でも、どうやって?
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