94人が本棚に入れています
本棚に追加
「怖い? どうしてです? 真田さん、こんなに優しいのに」
「どこが優しいんだよ。喧嘩して停学処分食らってる不良なんだぞ」
「その喧嘩は、真田さんの方から始められたんですか?」
「……違うけど」
「じゃあ、真田さんが悪いわけじゃないですよね!」
きっとこの間の不良連中に理不尽なことをされて仕方なくだったんだろうと私は想像した。けれども、真田さんはそっと首を振る。
「きっかけはどうでも、病院送りにまでしたことは悪いと思ってる。治療代もバカにならないからな」
相手の怪我や治療費にまで胸を痛めている彼が、ただの不良のわけがない。私はそう思うけど、彼自身はそう思っていないようだった。
「俺も結局あいつらと同じ、どうしようもないバカだ」
「でも、真田さんは弟さん思いで一生懸命バイトしているじゃないですか。偉いです」
「それは……そうしないと生活が苦しいってだけだ。偉いとかは違う」
それが当たり前なんだと、謙遜ではなく、本心で言っている。
そんな彼が私にはますます魅力的に思えてきた。地に足がついていてかっこいい。
コーラを飲もうと口元に運ぶ手がもう立派な男の手だ。
私はドキドキしながら口を開いた。
「あの……真田さんは、お付き合いしている人とかいるんですか……?」
最初のコメントを投稿しよう!