突撃! ド貧乏家の昼ごはん

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突撃! ド貧乏家の昼ごはん

「えっ……いいの⁉︎」 「いいよ。早く来て。兄ちゃんが鍵閉めちゃう」  悠くんがそう言うから、私は急いでアパートの階段を駆け上がった。ちょうど真田さんがドアを閉めようとするところだったので、私はやや強引にそこに滑り込む。 「お邪魔します!」 「え? あ、おい──」  彼の長い腕の下を潜り抜けた先に見えた光景は。  ものすごく狭い玄関。靴を三つも置いたらいっぱいになりそうだ。  その玄関のすぐ横にはキッチン。廊下のスペースと調理スペースが兼ねられている。その先には畳でたった一間の極小スペース。うちの家のトイレより狭い。  もしかしてあそこがリビングなの? 何で部屋が一つしかないの?  こんな狭いところで、とても人が暮らしていけるとは思えない。 「ちょっと待てよ。何だいきなり」  怒っているというよりも呆れた様子の真田さんが私に声をかけた。 「ごめん、兄ちゃん。ぼくが呼んだんだ」  リビングからさっきの男の子がパジャマ姿のままふらりと現れた。 「悠」  少し顔色が悪くてとても痩せている、背の小さい男の子だった。 「駄目だろ、寝てなきゃ」 「大丈夫。今日はいつもより調子がいいんだ」  男の子は私の方に向かって悠です、とぺこりと頭を下げた。 「狭いから……どうぞ奥に入って」 「どういうつもりだ?」  悠くんは少し笑いながら言う。 「ぼくだってたまには兄ちゃん以外の人とおしゃべりしたいんだよ。それに兄ちゃん……無口でつまんないし」 「つまんないって……」  ひでえな、と素直に落胆の表情を見せた真田さんと目が合った。 「……しょうがねえな。入れば」
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