突撃! ド貧乏家の昼ごはん

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 誰かのお家にお邪魔するの、初めて。  しかも真田さんのお家だ。ドキドキが止まらない。丁寧に靴をそろえてお邪魔する。 「……悪いけど何もねえぞ」  彼の言葉通り、居間には大きな家具はほとんど見られず、小さな卓袱台と衣装箪笥と冷蔵庫という生活に必要な最低限の物しかない。何もないからかえってすっきりとして綺麗な印象を受ける。 「テレビもエアコンもないんだ。今時珍しいだろ」 「大丈夫です、私も持ってないですから……テレビ」 「あんたんちも?」 「はい。子どもの頃から一度も見たことがありません」  父親の英才教育が厳しくて、テレビやゲームは一切触らせてもらえず、私はもっぱら本や音楽を娯楽としてきた。 「そっか。似てるな、俺たち」  不思議。  真田さんと私の境遇は似ているはずがないのに、彼とは話が合いそうな気がする。心根の部分で共感するものがあるような。  私が勝手にそう思っているだけかもしれないけれど。  座布団もないから、私は畳にきちっと正座して座った。少し離れて真田さんがどかっと座り、悠くんは窓際の敷きっぱなしの布団の上に座った。 「ごめんね、こんな格好で。呼吸がちょっと苦しくて、外の共同トイレに行くだけでもたまにしんどくて……」 「ううん。何の病気か聞いてもいい?」 「弁膜症っていう心臓の病気。心臓の中の四つの部屋を仕切っているドアみたいなところ……弁っていうんだけど、それがうまく動かなくなっちゃうんだ。生まれつきなんだって」  ちょっと聞いただけでも大変そうな病気だ。 「5歳の時に一度手術して治ったはずだったんだけど、最近また調子悪くて……興奮したり激しく動いたりすると発作が起きて呼吸困難になっちゃうんだ」 「そうなんだ……」  私が黙ると部屋に静寂が満ちた。 「……兄ちゃんも何か話しなよ」  静けさに耐えかねたように悠くんが言うと「何話せばいいのか分かんねえ」と真田さんはぶっきらぼうに答えた。 「……ね? つまんないでしょ?」  悠くんがこっそりと私に言う。私はくすくすと笑った。  
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