突撃! ド貧乏家の昼ごはん

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「……なんか小腹がすいたから作ってくる。悠の相手頼んだ」  一分も間が持たず、真田さんは立ち上がって廊下へ消えた。廊下と言っても歩いて十歩くらいの距離だ。 「……びっくりしたよ。兄ちゃんが誰かと一緒に帰ってくるなんて。しかも女の子と」  悠くんは彼に聞こえないようになのか、もともと声がか細いのか、小声で私に話しかける。 「そんなに珍しかった?」 「珍しいも何も、初めてのことだと思うよ。兄ちゃん、女の人をあんまり信用してないから……」  信用していない、とはどういうことなのだろうか。  尋ねようとしたけど、悠くんがパッと表情を明るくして続ける。 「だからぼく、嬉しくて」 「えっ?」 「兄ちゃんがぼく以外の人とあんなに楽しそうにしてるの、初めて見たから……」 「楽しそう……?」  どこが? と私はびっくりして聞きたくなってしまった。 「楽しそうだったよ。分からなかった?」 「う、うん。最初はちょっと笑ってくれたけど、あとはほとんど無表情だったし……」 「笑ったの? すごい! 兄ちゃん、感情表現下手なのに」  悠くんは嬉しそうに手を叩いた。 「愛想がないから怖いって思われがちだけど、兄ちゃん本当はすごく優しいんだよ。今はちょっと停学中なんだけど、それも不良に絡まれてた同級生を助けたせいで喧嘩に巻き込まれただけなんだ。ちょっとくらい言い訳すればいいのに、そういうの男らしくないからって素直に処分を受け入れちゃってさ。本当に不器用なんだから」 「やっぱりそうだったのね。私も真田さんに助けられたの。だから絶対いい人だって信じてたのよ」 「そっか。良かった! 大好きな兄ちゃんがみんなの嫌われ者だなんて、悲しいなって思ってたんだ」  なんて可愛い弟なんだろう。ぎゅっと抱きしめたくなっちゃう。
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