突撃! ド貧乏家の昼ごはん

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「兄ちゃん、ぼくのせいでバイトばかりしてるから友達もできないんだ。ぼくたち、未成年だから本当は養護施設っていうところに預かってもらうべきなんだけど、あそこは怖い子たちばっかりで……それにぼくの体にも良くないからって、入るのを断ったの。それで今は兄ちゃんが無理して生活費を稼いでくれてるんだ」 「すごいんだね、悠くんのお兄ちゃん」 「うん、自慢の兄ちゃんだよ! 兄ちゃんは何でもできるんだ。工事現場で働いてない時は中華料理屋の厨房でお料理も作ってるよ。あとたまに引越しのバイトとか、新聞配達とかもしてるよ」 「すごい、すごい!」  真田さんを褒めると、悠くんは心からの笑顔を見せてくれた。悠くんは本当にお兄ちゃんのことが好きらしい。 「おい、身内の自慢なんて恥ずかしい真似やめろよ」  キッチンの方から苦情が飛んできた。 「別の話題にしろ」 「はいはい。兄ちゃんは本当に照れ屋だなあ」  仲の良い兄弟のやりとりに胸がくすぐったくなってくる。  二人きりだけど、なんてあったかい家族なんだろう。 「うち、テレビがないから、兄ちゃんが学校の図書館で本を借りてきてくれるんだ。ぼくはそれで勉強したりしてるの。ねえ、シェイクスピアって知ってる? ぼくの好きなイングランドの劇作家なんだけど」 「もちろん、知ってるわよ。私も大好き。ハムレットとか、ロミオとジュリエットとか!」 「お姉ちゃんはロマンティックなお話が好きなんだね。ぼくはどちらかというと喜劇の方が好きだよ。夏の夜の夢とか、ヴェニスの商人とか」 「分かるわー! 嬉しい、学校のお友達とはこんな話をしても全然会話が弾まないのよ」  妖精パックが妖精の女王ティターニアにかけた魔法について悠くんと笑いながら話していると、真田さんが大皿に乗せた塩焼きそばを持って戻ってきた。 「楽しそうだな、悠。あんまり無理すると息が苦しくなるぞ」 「大丈夫だよ、これくらい。あ、桜エビ。いつもはトッピング無しなのに。奮発したね!」 「うるせえな」  そういうこと言うのやめろ、と照れたように言う真田さんがなんだか可愛く見えた。 「私も食べていいんですか?」 「もちろんいいよ。みんなで食べよう」  悠くんの言葉に無言で頷く真田さん。
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