真田家のピンチ

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真田家のピンチ

 それから、三週間ばかり経った。  私の願いが矢野を通じて父に届き、例の現場に何らかの改善がされたことは矢野から既に聞いていた。  どんな改善が行われたのかは詳しく聞いていないけど、そろそろ何らかのリアクションがあってもいい頃だと思う。  あの兄弟は少し潤っただろうか。  気になりながらも、私はなかなか真田さんと会うことができなかった。父への報告はされないとはいえ、メガネをかけている間は矢野に行動が筒抜けになってしまうというのがネックで、真田さんの家に訪問することも躊躇ってしまって行けず。夜はもちろん、特別な用もない限り外出が禁止されている。  いつ彼らの様子を見にいけるかと機会を窺っているうちに、こんなにも時間が経ってしまった。    けれども、ついに今日、私は学校で真田さんの姿をとらえた。  それは、昼休みのことだった。  真田さんが悠くんのために学校の図書館で本を借りていると聞いていたから、いつか会えると思って私は連日図書館に通いつめていた。  矢野からは「勉強熱心ですね」と嫌味を言われていたけど、図書館に通うこと自体は決して悪いことじゃない。誰に咎められることもないから堂々と通った。  この作戦が実を結んだのだ。  昼休みの終わり頃、今日も無駄足だったかと思いかけていた時だった。  長身の真田さんがフラッと現れ、カウンターに二冊本を置いてすぐに立ち去ろうとしたのが見えた。 「真田さん!」  当然、私は大喜びで彼を追いかけた。  図書館の外に出たところの廊下で、彼は私の声に気づいた。
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