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「お久しぶりです!」
「……ああ。あんたか」
一目見た瞬間、私は異変に気づいた。
最後に会った時にはあった精彩が欠けている。どことなく細くなったようだし、肌の色も不健康そうだった。
「どうかしたんですか? なんだか、具合が悪そうですけど……」
「……別に。何でもねえよ」
「お仕事、まだ忙しいんですか?」
工事期間は今月末までと看板に書いてあったように思う。宮藤家が提供した重機や人手があれば、忙しさが増すことはないはずなのに。
私の問いに、真田さんは答えなかった。
表情が暗い気がする。どうしたんだろう。胸騒ぎがする。
「何かあったんですか?」
「何でもねえって。あんたに話すことでもねえし」
彼は私と目を合わせようとしなかった。
そっけない。前もそっけなかったけど、あの頃よりもっと……そっけない。
「あの……」
私が話しかけようとした時、頭上で昼休みが終了するチャイムの音が鳴った。
「じゃあな」
「待って!」
私は思わず彼の腕を掴んだ。歩き出しかけた彼は、驚いたように振り向く。
「教えてください。どうしても気になるんです!」
彼の瞳に動揺のようなものが浮かんだ。けれどもその目はすぐに憂いを映して伏せられる。
「……クビになったんだ。工事現場のバイト。それだけだよ」
驚くべき一言に、彼の腕を掴んでいた私の手が思わず離れた。
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