お嬢様 エピソード0

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「ところで、その高校へはどうやって通うおつもりですか?」 「もちろん、徒歩で!」 「大丈夫ですか? 姫は大の運動嫌いではありませんか。特に、歩くのはすぐに飽きてしまうとおっしゃって、1キロどころか100メートルでうちの運転手を呼ぶ有様でしたが」 「高校に通うためだもの、頑張るわ! それに徒歩なら帰りに寄り道ができるし、朝寝坊したら遅刻するスリルを味わえるのよ! あ〜もう時間ない! とか言って慌てて朝食を抜いたりするの。朝からそんなにハラハラドキドキできるなんて、素敵じゃない?」 「なーんてリアルな妄想してると、本当にそうなりますよ。私にはもう今から目に浮かぶようです。せめて自転車を使われたらいかがです? ……おっと失礼」  矢野はコホンとわざとらしい咳をした。 「姫は自転車に乗れないんでしたね」  m9(^Д^) プギャーという顔文字が貼り付いているような、皮肉な笑みを浮かべる矢野。  私が自転車に乗れないことを知っているくせにわざわざ嫌味を言いおって。 「もう、頭にきた!」  私は両手でバン! と彼のデスクを叩いた。 「……反対なの? 私の徒歩通学」 「当然です」  矢野は下から睨み上げるように私を見た。 「嫌な予感しかいたしませんので」    矢野の嫌な予感はよく当たる。  そして私は、彼の言う通り、登校初日にとんでもないトラブルに巻き込まれることになったのだった。
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