真田家のピンチ

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「真田さん!」  私が駆け寄っていくと、彼というより周囲の生徒たちの方が驚いた顔をした。  あの子、殺されるんじゃない……? と危惧しているかのような視線だけは浴びせてくるけど、助けようという気は全くないようで、結局みんな足早に去っていく。 「お昼休みの時のお話の続きが聞きたいから……一緒に帰ってくれませんか?」  私はそんな彼らを無視して、真田さんだけを見つめて言った。 「続きなんてねえよ。あれで終わりだ」  彼はつれない態度で私の横を通り過ぎる。 「真田さん!」  私は足の速い彼に置いて行かれまいと必死に後を追った。門を出たところでようやく追いついた時には完全に息が上がってしまっていた。 「……大丈夫かよ」  周囲に人がいなくなると、やっと彼から声をかけてくれた。 「……あんまり校内で俺に話しかけない方がいいぜ。あんたまで変な目で見られる」 「それでそっけなかったんですか?」 「……いや」  人と話すのは苦手だし、と彼は出会ったばかりの頃のように朴訥に語った。 「私のことなら、気にしないでください。どうせ友達なんていないし、もともと変な子だって思われてますから」  私が笑いながら自虐的に言うと、真田さんは思い出したように少し笑った。 「そうか……変だもんな、あんた」  失礼なことをはっきり言ってくれるけど、それでも嫌な気持ちは全くしない。悪気があっての発言ではなく、はぐれ者同士の親近感があるからこその言葉だと思ったからだ。  少し空気が和やかになったのを感じて、私は本題を切り出した。 「あんまり顔色が良くないみたいですけど……体の方は大丈夫なんですか? ちゃんと食べてますか?」 「少しくらい抜いたって大丈夫だから」 「やっぱり食べてないじゃないですか。いつから食べてないんですか?」 「今日の昼」  あと、朝飯と、昨日の夜も……と彼が続けたので私はびっくりした。
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