危険なバイト

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「矢野⁉︎ どうしてここが……」  通話を切った時にメガネの電源も切ったから、もう追跡されないと思っていたのに。  そんな私の考えなどお見通しだというように、矢野は薄く笑った。 「メガネについているGPS機能で姫の居場所を特定しました。姫が電源を切ってもこちらの端末でアカウントにログインすれば姫の位置を特定することなど造作もないのです。まあ、そんなもの使わなくても姫の行先など私には既に分かっておりましたけどね」 「さすがね! ちょうどいいところに来てくれたわ、ちょっとあなたにお願いが──」 「その前に!」  青筋立てた矢野が土足で真田さんの家の畳を踏みつけて上がりこんできた。そしてぐいっと私の眼前にその怖い顔を突出し、 「謝ってください」  と言った。 「……は?」  私はきょとんとした。 「さっきの電話のことです。この矢野との通話を勝手に切りましたね!」  ……そんなことで。 「矢野、そんなの後で……」 「今、謝ってください! そうでなければ今後一切の協力はいたしません!」  矢野は完全にへそを曲げていた。 「今夜は帰らないなんて言われて電話を切られた私の気持ちが分かりますか? 姫のためにこれほど協力している私をないがしろにして、勝手にまたこのような場所に入り浸って! これ以上わがままを言うなら本当にもう付き合いきれませ──」 「ごめんなさいっ」  私は畳に額をこすりつけるようにして土下座した。  あまりに潔くお嬢様のプライドを捨てた私に、さすがの矢野も絶句したようだった。 「お願い、矢野。もう少し私のわがままに付き合って。こんなこと、あなたにしか頼めないの……!」  土下座したまま、私は泣きそうな声で頼み込んだ。 「……また泣き落としですか? 他に芸がないんですかね」  口では意地悪を言いながら、矢野はやれやれと私の肩を叩く。顔を上げると、矢野はクールな瞳で私に言った。 「で──次は何をすればいいんです?」
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