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「ほう。面白いじゃないですか。その覚悟とやらが本物かどうか、試して差し上げましょうか?」
矢野も負けじとドSっぷりを発揮しようとしている。
「試すって、どうする気よ?」
私だけがオロオロして、左右の二人を交互に見た。
「さあ姫、この男にいつものムチャブリをどうぞ」
「わ、私⁉︎」
いきなり振られて、私は目を丸くした。
「いつものって何よ! 私はそんなにいつもムチャブリしてるつもりはないわよ!」
「何言ってるんですか。口を開けばわがままばかり、しかも無理難題ばかり私に押し付けてくるくせに」
「そんなこと言ったって……」
私はチラッと真田さんを見た。
「早く言えよ。テメエらの望み通り、何でもやってやるから」
それを聞いて、私の顔から火が出そうになった。
もしかして、今ならワイルド系王子様モードの真田さんが私の言うことを何でも聞いてくれる?
そんなおいしい状況なの⁉︎
「姫、分かっていると思いますが、なるべくこの男が出来そうにないことをムチャブリするんですよ。一曲歌えとか、一発芸しろとか、パンツ一丁になれとか」
矢野がこっそり耳打ちする。
「えっ⁉︎ 嫌よ、そんなの可哀想!」
「何を言ってるんですか。我々はこの男をクビにさせるために来たんですよ? 敵に情けは無用です。ちょっと顔がいいからってホストで稼ごうなんてムカつく野郎は恥を晒して○ねばいいんですよ」
「矢野、毒が強すぎて伏字でも隠しきれてないわよ!」
もしかして、矢野は真田さんがカッコ良すぎるから僻んでいるんじゃないだろうか。
「何ゴチャゴチャ言ってんだ? こっちは気が短いんだ。早く決めてくれよ」
真田さんはイライラしている。
「仮に成功したとしても、気に入らないって文句を言って切り捨てちゃえばいいんです。徹底的なクレーマーになって、こんな仕事は出来ないと思わせてやりましょう。それがこの男のためなんです!」
矢野も珍しくエキサイトしている。
二人に挟まれて、私は頭を抱えた。
どうしよう。
私は真田さんに何をムチャブリすればいいの⁉︎ 誰か教えてーっ!
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