敗戦のリムジン

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「そっか。そうよね! 私の魅力をもっとアピールすれば、真田さんを振り向かせるチャンスは私にもまだあるわよね!」  私は元気よく顔を上げた。 「あれ? 何だか雲行きが……」 「私、もうちょっと頑張ってみる! 本当はちょっとくじけそうになっていたけど、真田さんが私を嫌う理由がお金持ちだからってことだけなんだとしたら、諦めるにはまだ早いわ! ありがとう、矢野。あなたのおかげでやる気が出てきたわ!」  私が満面の笑みを浮かべると、矢野は引き攣った笑みを返した。 「お役に立てたようで何よりです」 「さあ、そうと決まればうじうじしている暇はないわ。もう一度真田さんを取り返しに行くわよ! 悠くんと約束したんだから!」  私はそう言って前を見据えた。  矢野も同じく気持ちを切り替えたらしく、ネクタイをぐっと締め直す。 「それで、次の手は?」 「……こうなったらもう、最後の手段よ」  「最後の手段?」 「そう。あまりにも卑劣だから、この手だけは使いたくなかったんだけど仕方がないわ。彼の弱点を突きましょう」  私は矢野をじっと見つめた。 「矢野、お願いがあるの」  私のいつものセリフに、矢野ははいはい、と諦め顔で言う。 「こうなったらもうとことん付き合いますよ。この矢野に何でもお申し付けください、姫」  
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