攫われた弟

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『本当にごめんなさい、真田さん……私がついていながら、大事な悠くんを……』 「いや、あんたのせいじゃない」  真田はオロオロしているゆみの言葉を即座に否定した。 「俺のせいだ」  宮藤愛姫を甘く見ていた。あの女がここまでやるとは。  真田は受話器を破壊するくらいの強さで握りしめた。  宮藤愛姫とその執事への憎しみが彼の胸を燃やす。 「あんたはもう帰っていい。後のことは俺が決着をつける」 『大丈夫ですか? 真田さん』 「大丈夫だ。心配するな」  電話を切る。ゆみにお礼を言い忘れたことを思い出したが、再びかける暇はなかった。 「すみません、宮藤愛姫の屋敷ってどこにあるか調べられますか?」  真田はレジのそばにいたスタッフに尋ねる。 「あのでかい屋敷を知らねえのか? ここから近いぞ」  彼がスマートフォンで地図アプリを出してくれた。道順を頭に叩き込み、真田はすぐに店を飛び出した。  完全にクビだな。  そう思ったが、後悔は全くなかった。  夜の街を疾走する。焦りとは裏腹に、爽快な風が彼の体を吹き抜けていった。  
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